*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「おい高辻、お前、なんでカーデガンでもなく部活のウインドブレーカーでもなく、よりにもよって私服のパーカーなんて着て来てんだ。」
「両方とも欠席だからです。」
「一応理由聞くが。」
「甥っ子がカーデにミートソースこぼしました。ウィンブレは知らない女の子に貸してしまってそのまんま。」
教室は爆笑の渦だが、担任は海より深い溜息をついた。
「で、仙道、お前は?」
「寒いからです。」
「問題児がペアルックみたいな格好してんじゃねえ。お前ら前世兄弟だろ。」
その言葉に教室のボルテージはマックスとなった。
「いやマジでペアルックじゃん。申し合わせて来たの?」
「まさか。」
休み時間に美代が佐和のパーカーを指差して笑う。佐和は即答。
「噂になってるよ。練習試合での勇姿。」
「彰?」
「アンタ。」
「私?」
美代がくすくすと笑うと、お姫様抱っこ、とジェスチャーする。
「あー…。」
「その時に上着貸したんでしょ?どこのイケメンよ。」
「寒いと思って…。」
「俺はチラッと見ただけだけど、躊躇いなくやるもんな。」
越野が振り返り、ニヤニヤと笑う。
「越野見てたの?」
「仙道がお前の方チラチラ見てるから俺まで気になって。」
「ごめんな、彰の奴が。」
「お前はアイツの母ちゃんか。」
「越野は女房じゃん。」
「彼女のお前が言うなよ。」
その日は1コマ全部がホームルームの時間があり、担任が教室に入ってくると、手に佐和のウインドブレーカーがあった。
「おい高辻、ウインドブレーカー返ってきたらしいぞ、ほら。」
佐和は丁寧に畳まれたそれを担任から受け取り、席に戻る。
「せめてそっちにしてくれ。」
「え、いまここで脱ぐ?別に制服着てるからいいけど…。」
「バカ。それで制服着てなかったらブン殴るところだったぞ。トイレ行け。」
仙道が小さくむせたのが聞こえ、佐和は急に土曜のことを思い出し、行ってきます、とそそくさと出て行った。
(部活だったからあの時はパーカーの下に何も着てなかったんだよな…。)
「じゃ、球技大会の出場種目決めるぞー。」
担任が黒板に種目を書く。そして教卓に肘をついて要項を見ながら反対の手で頭をかきつつ、注意事項などを説明していた。
「バスケ部とバレー部は自分の部活の種目出れねぇのか。」
担任は顔を上げると、
「高辻、お前はバスケな。」
と着替えて戻ってきた佐和を見て言った。
「やだよ、ルールちゃんと覚えてないし。ドッジボールにして下さいよ。」
「すぐ近くにバスケ部いるだろ。教われ。」
あとは元バスケ部の奴いねーか、と募ると、佐和がやるなら、とバスケ経験者の女子が何人か名乗りを上げた。
佐和は頭を抱えて、参った、と呟く。
「仙道、お前はバレーな。」
「?あ、はい。」
「ルール分かるのか?」
「……はい。」
「わかる奴、仙道にルール教えてやれ。」
仙道は横を見ると、佐和がウインドブレーカーのポッケに手を入れ、不機嫌そうに口を尖らせて椅子にもたれていたので、
「バスケ、教えてあげよっか。」
と笑いかける。佐和は目線を向けると、
「宜しくお願いします。」
と困ったように笑った。
(美代はバレー?)
(中学でやってたからねー。)
(お、日下部ルール教えてくれよ。)
(…いーけど。)
(なんでちょっと嫌そうなの?)