*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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女の子にはやさしくしなきゃと
自分のことは後回し。
もっともっと自分を大切にして欲しい。
俺が君の全部を守りたいけど、限界がある。
それを感じる度、その無力感にひどく苛まれるんだ。
知ってた?
君にはこんなに振り回されているんだよ。
佐和。
「だからウィンブレ羽織ってなかったんだ。」
「そー。貸しっぱなし。」
「そのパーカー、ちょっと薄くない?」
「ちょっとね。でも、マフラーあったかかったから我慢できた。」
上着貸してくれてありがとね、とベンチに座った佐和が背を向けたまま軽く片手をあげる。
(別に着替えるわけじゃないからこっち向いてていいのに。)
仙道が、どういたしまして、と返事をすると、佐和はまた雑誌に目を落とした。
ぱたん、とロッカーを閉めて佐和を振り返る。
(集中してんなー。)
自分が手渡した週バスを真剣に眺める佐和に目を細める。そして不意に目に留まった、うなじ。
部活柄あまり日に焼けない白い肌が、自分の貸した上着の隙間から見え隠れする。
仙道は吸い寄せられるようにそこに口付けた。
「……っ!?」
勢いよく振り返った佐和に軽く睨まれる。
「ははっ、ごめんごめん。出来心。」
「油断も隙もねーな…!」
佐和は読んでいた雑誌で軽くはたくと、それを返すように差し出す。
仙道はそれを受け取り、背中合わせになるようにベンチに座るとその雑誌を鞄にしまう。
ー安心した。
ー俺ばっかり好きなんじゃないかって思ってて。
(そんな風に思ってたんだ。)
佐和はその言葉がずっと引っかかっていた。
(どうしたら伝わるのかな。)
大きな背中に触れようとして、やめる。
立ち上がり、仙道の正面に回ると、それに気付いた仙道が、なに?と笑顔で首を傾げた。
佐和は手を伸ばし、仙道の頭を抱えるように抱き締める。
「……っ!」
仙道は突然の事に言葉を失う。
「さっき、女の子たちに言った言葉、あるだろ。」
「あんな啖呵切ったのにさ、想像したら凄くしんどい。」
「好きだよ、彰。」
手を離さないでね、と、ごく小さな声で呟くと、佐和は仙道の頬を両手でで包み、口付ける。
(……もう、無理だ。)
仙道は、離れていく佐和の腰を引き寄せる。
「佐和、」
「俺、佐和が欲しい。」
そう言うと、仙道は腰にやった手とは反対の手で佐和の後ろ頭を固定し、噛み付くように何度も角度を変えながら口付けた。
仙道の足の間に置いてあった彼の鞄に躓き、佐和は仙道の方に倒れ込む。慌てて体を剥がそうとするが、びくともしない。
(こんなに力強い…!?)
並みの女子よりは鍛えている方だし、多少腕っ節には自信があった。しかし、目の前の男には通用しないことを、思い知らされる。
息を吸い込もうと佐和が小さく口を開けばそこから舌を滑り込ませる。
仙道は腰に回している手を佐和のパーカーの下に潜り込ませた。
ややひんやりとしたその手に佐和の体が小さく震える。
(だめだよ、こんなの…っ!)
佐和は、頭ではそう思っているのに体がそうは感じていないことに戸惑う。
その時、人が入ってくる気配があった。
「おい、仙道か?まだ居るの…」
その声を遮るようにけたたましい音が響き、池上は口をつぐんだ。
慌てて奥に駆け込むと、ロッカーに頭をぶつけ、へたり込む佐和と、ベンチから乗り出して慌てる仙道が居た。
「お、おい、高辻!大丈夫か!?」
「い、たた…池上さん…お疲れ様でした…。」
(あ、危なかった……。)
後頭部をさすりながら佐和が口を開く。
池上が駆け寄り、膝をついて佐和の背中に手を回し、起こす。
仙道が顔を覗き込み、ごめん、と謝っている。
「何やってたんだ…お前。」
仙道を軽く睨む池上に、佐和があわてて口を開く。
「急に立ちくらみしただけなんで…。ごめん仙道、びっくりさせちゃったよな…。」
「い、いや、俺の方こそすぐに受け止められなくて悪い…。」
池上さん忘れ物ですか?と苦笑する佐和に池上はほっとして、ああ、と短く答える。
「ロッカーへこんでない?」
「佐和ちゃん、自分の心配してくれないか。」
そのやりとりに池上は笑うと、佐和から手を離して肩をひとつ叩き、立ち上がる。自身のロッカーを開け、目的の物を鞄にしまう。
「もう帰るだろ、出るぞ。」
2人は返事をして立ち上がった。
(そもそもなんで部室に居たんだ?)
(女の子は体冷やしちゃダメだから俺が連れ込みました。)
(言い方考えなよ。)