*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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どうしたら円満なのかとか、
女の子にはやさしくしなきゃとか、
そんなことを考えてみたけど、最後に家訓の但し書きを思い出す。
『但し、勝負事はその限りではない。』
「……なんだあれは。」
相手校の見送りを終え、引き上げるバスケ部。
その時、田岡が体育館の方を見て眉間に皺を寄せた。
「おい、あれ、高辻だろ。」
池上が仙道に耳打ちする。
仙道は、まいったな、とひとりごちると、
「俺が蒔いた種です、すみません。」
と足早に体育館に向かった。
「面倒臭いな。」
佐和は腰に手をあて、反対の手で首の後ろを掻き、溜息をつく。
「どうして欲しいわけ。はっきり言えよ。」
軽く睨むと女子たちはやや怯んだが、
「せ、仙道くんと別れてよ。」
と言い放つ。
多少は覚悟していた。こういうやっかみがあることや、理不尽なことを言われることを。
(でもさ、私にも譲れないこと、ある。)
佐和は睨むのをやめ、溜息ではなく、息を吐く。
「ちゃんと言えて、偉いね。」
「な……馬鹿にしてんの!?」
「してないよ、本当にそう思ったの。」
でもね、と続ける。
「別れる気、ないよ。」
「その時は、彰が私の手を離す時だから。」
言い終わって、急にどしんと心が重くなる。
(なんだよ…言葉にすると結構しんどいな、これ。)
一瞬想像してしまって血の気が引いた。
(私、そんなに彰のこと、好きなんだ。)
じんわり目の奥が熱くなり、大きく深呼吸する。
「じゃー心配ないね。俺も手放す気、ないから。」
そこに居た全員が階段の方を向く。
「せ、仙道くん…。」
女の子が驚いて目を見開く。一緒にいた友人たちも固まってしまっていた。
「応援ありがとね。」
笑顔で女の子たちの方にそう言って、階段を登りきると佐和の隣に立つ。
「俺、彼女のこと大好きだから、いじめないで欲しいなぁ。」
そう言って佐和の羽織っているジャージの襟元を掴み口元が隠れるように持ち上げると、自分の方に向かせ、少し屈んでキスをする。佐和は瞬きするしかなかった。
「これでわかってもらえた?気持ちは嬉しいけど、俺、彼女のことで頭いっぱい。」
そう言って、へら、と笑った。
やがて女の子たちは帰って行き、その場に2人残される。
「安心した。」
仙道がこぼす。
「俺ばっかり好きなんじゃないかって思ってて。」
佐和は襟元を正すと、首を傾げる。
「彰でもそんなこと思うんだ?」
その言葉に仙道は苦笑いをすると、
「俺をなんだと思ってるの。」
そう言ってもう一度キスをした。
(前もこんな台詞、言われたっけ。)
佐和はインターハイ前のことを思い出し、随分昔のことのように感じた。
「仙道。部室、あとお前だけだから施錠しとけよ。」
越野が階段下から叫ぶ。仙道は、笑顔で応えると、行こ、と佐和の手を取る。
「ここで待ってるよ。」
「寒いからダメ。」
そのまま佐和の手を引き、クラブハウス棟へ向かった。
道すがら、仙道が思い出したように口を開く。
「あの愛の告白には驚いた。俺張り切っちゃったよ。」
「なんのこと?」
「大好きって。」
「は?いつ?」
え?と仙道がきょとんとする。
「佐和が席を外してから戻って来てすぐ?かな?」
佐和は少し考え、心当たりを探る。
「……ナイス、って言ったやつ、か?」
「……あれ。そなの?」
最後は笑っただけだよ、と佐和が言うと、あはは勘違い、と笑う仙道。
「…別に、勘違いじゃないけどね。」
「ん?なに?」
「なーんも。」
早く帰ろ、と佐和が言うと、腹減ったなぁ、と仙道は笑い、少し早足になった。
(由佳ちゃんがごはん食べに来る?って。)
(マジ??行く行く!)