*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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「練習試合?」
「うん、今度の土曜の午後。」
冬休みが明けて新学期となり、また日常が始まった。
昼休み、いつものメンバーで昼食をとっていると、仙道が思い出したように口を開く。佐和は頭の中で予定を確認すると、
「あっ、午前練だけだから観に行ける!」
とはしゃいだ。それを見て仙道も満足そうに微笑んだ。
「美代は予定ある?」
「んー、その日はちょっとダメだー。」
「そっか、また機会があったら行こ。」
「うん。卒業までにマトモな仙道みておきたいし。」
越野と植草が笑うと、仙道は「ひでぇ言われよう。」と苦笑いした。
練習試合の当日、体育館は大賑わいだった。
(女子多いな…。)
越野から、仙道目当ての観客、主に女子が多いということは聞いていたが、まだ時間まで随分あるというのにこの賑わいはどうなんだ、と佐和は苦笑いした。
「佐和!お疲れ!」
仙道がやってくる。佐和は振り返り、笑顔を返す。
(なんかテンション違う。試合ハイかな。)
「仙道、お疲れ。すごい人だね、ギャラリー多い…。」
「本当だねぇ。」
全く気にもしない様子でへらっと笑う。
(仙道目当ての女の子多数…かぁ。)
「お、来た来た!」と、越野と植草が合流した。
雑談をしていると、
「あの、」
と女子の声に全員がそちらに振り返る。
4人組が立っていた。
「仙道さん…ですよね。」
「あ、はい。」
きゃあ、と黄色い声があがるのに佐和は少し引いた。
(マジか……。)
目の前で差し入れだのなんだのと手渡している女子たちの姿を見て、佐和はなんとなく心が重たくなる。
「すみません、」
「!」
佐和が振り返るとその4人組の1人が声を掛けてきた。
「バスケ部…じゃないですよね。」
「あ…け、剣道部の高辻っていいます。」
思わず名乗り、取り敢えず笑顔を向ける。
すると、その女の子が小さな紙袋を差し出す。
「え、くれんの?」
「は、はい!どうぞ!」
そう言って他の3人に何か声を掛けると去って行ってしまった。
やがてその3人も去っていくと、たまらず越野が噴き出した。
「高辻、ファンじゃん!」
「ええー、仙道よりイケメンだったかなー。」
そう言って佐和はおどけて見せたが、内心溜息をついた。
「じゃ、頑張れよ。上から見てる。」
手を振って、3人と別れる。すると仙道は振り返り、2階への階段へ行こうとする佐和に、手招きした。
「どうした?」
「名前呼んで。」
早く、と催促され、佐和は小さく「彰、」と呼ぶ。
「彰、頑張れ。」
「……ん。頑張る。」
「こーしの。」
「なんだよ、機嫌いいな。」
「パス、くれな。」
その笑顔に、越野と、そばにいた植草も寒気を感じた。
「……50点くらい取るつもりなんじゃねえの。」
(ボールが仙道にわたるだけでこの歓声。)
試合開始から幾度となく上がる歓声。
最初こそ驚いていたものの、慣れてくる。
コートに居る自分の恋人はまるで
(別人みたい……。)
一体何本決めたんだろう。決める度に佐和を見て笑う。佐和は、バカだな、と思いながらも誇らしく感じていた。
第2ピリオドが始まったところで、佐和のすぐ近くがざわついた。
目を遣ると、女子がへたりこんでいる。
「大丈夫ですか、どうかしましたか。」
佐和はすかさず駆け寄り、顔を覗き込む。
「平気……ちょっとふらついただけです。」
その顔色はとても悪く、触れた肩は体温は平熱とは思えない熱さだった。
友人と思しき女子は慌てている。
彼女の額に手をあてる。
(ああ、やっぱり。)
「落ち着いて。保健室いこう、熱がある。」
そう言って佐和は自身のウインドブレーカーを脱ぎ、寒くないか、と聞きながら女子に羽織らせるとそのまま横抱きで抱き上げる。
「ちゃんと掴まって。お友達も一緒についてきて。」
そう言って保健室に向かった。