*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
眼が覚めると、隣に居たのは。
(……佐和?)
仙道が目を覚ますと、隣にはすやすやと眠る佐和の寝顔があった。
「んー…。」
(おっと。)
手を伸ばそうとしたら、小さな頭に触れた。
(そっか、夕べ泊まったんだ。)
リビングのすぐ隣にある小さな和室に4人。
佐和との間に由衣と由樹。ごろ、と由衣が寝返りを打って仙道の方にくっつく。
(…可愛い。)
もう一度目を閉じようとした時、由樹がパッと目をひらく。
「おれ、起きた!」
「お、おう、おはよう由樹くん。」
「おはよ!あきら、早起きだな!由衣、おきろ!ほいくえんおくれる!」
ゆさゆさと乱暴に由衣を揺する由樹を宥めるように仙道は「まあまあ、」と頭を撫でる。
「んー…由樹おはよう…。」
「おはよ!由衣おきろ!あきらも起きてる!」
「!あ、あきらくん!おはよう!」
「おはよ、由衣ちゃん。」
2人はけたたましく布団を出て行く。
全く起きる様子のない佐和を心配してもう一度寝顔を覗き込む。
(よく寝てられるな…息してるから大丈夫…だな。)
尚も寝息をたてて眠る佐和の額に軽く口付けて、仙道はもう一度目を閉じた。
ふと、佐和が動く気配に仙道は目覚める。半身を起こし、微笑む。
「おはよ、佐和。」
「……ハルくん。」
「!」
男の名前に仙道はぎくりとする。
そんな仙道をよそに、佐和はむくりと起き上がり、仙道の腰の辺りに突っ伏す。
(…寝ぼけてる?)
そして尚ももぞもぞと動き「違う…」と呟く。
「あっくん…?」
「佐和、ちょっと…」
「彰、佐和、起きてるか?」
覗きに来た千尋はその状況をみて溜息をついた。
「このバカ。」
「んん…あっくんでもない…ヒロくん…」
「違う。よく見ろ。」
千尋は、ぱしん、と佐和の頭を軽くはたいた。
「あたっ。ん…?」
「春翔でも秋也でも俺でもない。」
眠そうに仙道の腰に手を回し抱きつく妹に呆れ返り、千尋は仙道に向かって口を開く。
「保育園送ってくる。朝飯、置いてあるから温め直して食えよ。」
それから、と付け加える。
「気持ちは察するが、変な真似したら……わかってんな?」
千尋と子供達が出掛け、静寂に包まれる。
(さっきの名前はお兄さんたちか…。)
安堵したのも束の間、意識の冴え渡る状況に頭を抱える。
(頼むから…俺の理性をそんなに試さないでくれよ。)
仙道は片手で目を覆い、天井を仰ぐ。
ややあって、佐和が顔を上げ、のろのろと目線を上げる。じっと目を見つめられ、仙道はドギマギしてしまう。
「……本当に誰。」
「そんなにわかんないかな。」
仙道は吹き出して前髪を上げる。
それを見て佐和は目を見開き、慌てて体を離す。
「せ、あ、彰…いや、仙道…。」
「なんで言い直したの。」
くつくつと笑い、追いかけるように体を乗り出すと、佐和の腕を掴む。
「捕まえた。」
「チワース…」
越野は体育館に入ってギョッとする。
「チワース。」
「せ、仙道!?なんでこんな早いんだよ、明日嵐かよ!?」
はははっ、と笑う仙道は上機嫌だ。
「なんだよ…なにがあったんだ…。」
「俺、今日絶好調の予感。」
得体の知れない不安に頭を抱える越野をよそに、仙道はからからと笑っていた。
(高辻絡みかよ…。)
「佐和、なんか、変。」
「え?」
溜息多いよ、と指摘され、ひとつ溜息。ほら、それそれ、と言われ、またひとつ。
「延々と続くね。」
「なんか……精神的に削られてるかも。」
なんで?と聞かれたが、原因を思い出して目を覆った。そして友人にわからないよう、首に出来た真新しい痣に触れる。
(なんかもう色々と危なかった……。)
「んっ……ちょっと!」
突きの外れた痣を仙道の唇がなぞる。
「ね、佐和。」
仙道は佐和の喉から鎖骨のあたりを指先でなぞる。
「新しくここの痣が増えたらちゃんと教えてね。」
「なんで。」
「上書きするから。」
「……。」
「黙ってたって分かったら、増やすから。」
佐和は耳まで赤くして俯く。
仙道の口元は笑っていたけど、目は笑っていなかった。
「約束したよ?」
(佐和って朝弱いんだね。)
(…だから制服忘れたりするんだよ。)
(あと、耳かな。)
(やめっ、馬鹿…!)