*【三井】もしも運命の人が
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実感する。
こんなにも惹かれていること。
「合宿?」
「おう、1週間な。茨城に行くんだよ。あっちの大学と練習試合もする予定で。」
お盆の帰省を終えて、お土産を渡しがてら会いに行ったら、寿さんはそう言った。なんとなく、不服そうというか、
「1週間ね。」
「…。」
「どうしたんですか。」
「…長くねえ?」
「今までもそうだったんじゃないですか?」
「そーじゃなくて。」
並んで座っていたが、寿さんは体ごとこちらを向いて、私の手を握る。
「明音に会えない時間、長いだろ。」
真っ直ぐこちらをとらえる視線から逃れるように、少し目線を下げる。
「で、でもこの帰省だって…。」
「だからだよ、また同じくらい会えねーのかよ。」
「あっという間ですよ。」
「俺はこの1週間が長くて仕方なかったんだ。」
逃すまい、と顎を持ち上げて顔を上げさせられる。顔が近づいて来て、私は目を閉じる。
「素直じゃん。」
唇が重なると、性急に舌が割り込んでくる。今までのぶんを堪能するように。吐息が熱い。伝染するように体が疼く。
「寿さ…っ」
「…すげー欲しそうな顔してるんだけど。」
あんなに余裕なさそうなキスをしておきながら、余裕たっぷりに笑うその表情がなんだか憎たらしい。こちらばかり翻弄されているみたい。
「三井サン、なんか機嫌良い。」
「そうかあ?」
「…なんかムカつく。」
「いちいちつっかかってくるよな、お前。」
練習の合間に宮城が話しかけてきたかと思えば、言いたいことを言いたいだけ言って、鼻を鳴らす。
「どーせ彼女といいことあったんでしょ、明音ちゃん?あーあ、やだやだ。」
「なんだよお前…。」
「なんでこんな元ヤンが良いんだか。」
「ああ?」
そりゃこっちが知りてーよ。
『お疲れ様です。どうですか、調子は。』
毎日、夜の空き時間に電話を掛けた。どんな練習をしたとか、なにをしていたとか。明音も同じように何をしていたとか、こんなことがあっただのと話してくれた。体は相変わらず疲れているけれど心はうんと軽くなる。
「…やっぱ、会えねーとつまんねえわ。」
最後の夜にそう呟けば、少し間が空いて、私も、と小さく返してくるのがたまらない。
会いたい。
『…会いたい。』
タイミングの絶妙さに携帯を落としそうになる。なんだって、今、なんつった。
「あーあ…。」
『な、な、なんですか。』
「先越された。」
座っているベンチの背もたれに体を預ける。息を吐き出して、
「…俺も。早く会いてえな。」
人をこんなにも恋しいと思う日が来るとは思わなかった。
間も無く消灯の時間だ。太陽が昇って、バスに荷物を積み込んで、乗り込めば、後は勝手に大学まで連れて行ってくれる。そうだ、後ちょっとの辛抱だ。
『…嬉しい。ゆっくり休んで下さいね。』
「明音も。」
『ありがとうございます。じゃ、おやすみなさい。』
「…おう。おやすみ。」
知らず綻ぶ口元。立ち上がって表情を戻して、明日のことを思いながら部屋に戻った。
アップコンバート
想いは募って溢れて変化して、
質も密度も上がっていく。