*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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朝練が終わり、すでに疲労困憊の体に鞭打って教室に向かう。私立はシャワー室があって助かるなぁ〜なんて鼻歌混じりに、だが早足に歩いていた佐和は、自分の席に見慣れない女子生徒たちが居て立ち止まる。
(何してんの?)
近付いてみて分かった。彼女たちは自分の後ろの席の男子生徒に用事があるようで、楽しそうに喋っている。
「おはよー。ごめん、そこ私の席。」
「高辻おはよ。」
「はよ、仙道。前髪ちょっと落ちてる。」
女子たちは予鈴を聞いて教室を出ていった。仙道は指摘された前髪を指で弄び「参ったな」と笑っていた。佐和は席に座ると仙道に振り返る。
「人気者は大変だな。」
「高辻もオットコ前な噂きいてるよ。」
「はあ?」
仙道の机に肘をつき、あからさまに怪訝な顔をする佐和に、仙道はカラッと笑った。
「委員会を一喝した女。」
佐和はきょとんとしたが、やがて思い当たり深い溜息をついた。
「一喝じゃないよ…でも、なんか感じ悪かったかなぁ。」
頭を抱えるクラスメイトの肩を、仙道は励ますように二度タップした。
昼休みに、剣道部の先輩たちがニヤニヤしながらやって来た。その姿を認めると、佐和はいずまいをただし、立ち上がる。
「高辻ー!アンタ昨日、委員会一喝したんだって?」
佐和は慌てて廊下に出ると、指先を口の前に立てて静かにしてくれと合図をした。
「なんなんですか急に!」
「委員長になんでかうちらが感謝されてさ。意味わかんなかったからいきさつ聞いたら笑えてきちゃって…あはははは!」
アンタやるねぇ!と背中をバシバシ叩かれる。
「つうかほんとデカいな。身長いくつあんのよ。」
「174…くらいでしたかね。」
「そりゃこんなデカ女に威圧されたら怖いよねー!」
(座ってたんだけどなぁ……)
すると、一際大きな影が佐和の後ろからのっそりと現れて、先輩たちがぎょっとする。
「あ、すんません。ちょっと通ります。」
「仙道くんじゃん。実物大っきいねえ。」
「あ、どうも。」
そう言って、仙道はふらふらとどこかへ行ってしまった。その後ろ姿を見送り、改めて佐和を見上げる。
「仙道くんと並べば高辻も普通に見えるんだけどね。」
先輩はおかしそうに笑っていたが、すぐに微笑むと、一つ息をつく。
「委員長、あの女子たちの脱線具合に困ってたんだって。アンタのしたことは正しかったよ。」
だから安心しな、といって去っていった。わざわざフォローのために来てくれたんだろうか。そんなことを思うと、佐和は胸がじんわり温かくなるのを感じた。
(先輩たちがオットコ前なんだと思うんだよなぁ…。)