*【福田】ブルースカイブルー
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
近付いて来る。
もつかな、私の心臓。
ああ、もうそこにいる。
一歩、また一歩…。
「本郷、やっと見つけた。」
福田が息を整えながらこちらに寄ってくる。見つけた?私を?探してたのはこっちなんだけどな。
「それはこっちの台詞、」
「おい、まだ誰か居るのか。」
「…行くぞ。」
すこし離れたところから聞こえた教員の声に身を強張らせる。そんな私の手を引き、福田が昇降口の方へ走り出した。今度は私に合わせて、ゆっくりと。
やがて辿り着いた無人の昇降口。生徒は皆、既にグラウンドに出て行ってしまっている。しん、と静まりかえった冷たい廊下に、私たちの足音だけが響く。それはやけに大きく聞こえた。
「おい。」
「っはい!」
「…なんだそれ。」
小さく吹き出した福田に体の力が抜けた。私、そんなに緊張してたんだ。
だってそれは、私が、この男を。
「タオル、やっと返してくれるんだな。」
「はは…。ごめん、遅くなって。」
「いいけど。」
私にしてはきれいにたたんだタオルを差し出す。それを福田が受け取る時に指先が触れて、思わず手を引っ込めてしまった。
ひらりとタオルが落ちる。
「なにやってるんだ。」
床に落ちてしまう前に福田がそれをすくいあげる。私は小さく、ごめん、と謝った。
「… 本郷。」
福田は折り目が崩れてしまったタオルを、ばさ、と広げて、私の頭に被せる。正面以外の視界を遮られ、世界が遠のく錯覚に陥った。タオルを掴んでいる福田の手が近くて、それだけで顔が熱くなる。
「それは期待してもいい反応なのか。」
「え、あの」
「嫌なら、さっさと行け。」
「俺はあまり言葉が巧くない。」
逃げる理由なんてない。
このままこの距離がゼロになったって構わない。
私は意を決して口を開く。息を吸って、福田の目を見て、
さあ鳴らせ、ファンファーレ。
「…好き。」
言い終わる頃には、唇が重なった。校内放送も、グラウンドの喧騒も、今はなんだかすごく遠くにきこえるの。
この耳に届くのは互いの呼吸だけ。
それからあなたの、好きだ、の呟き。
it's mine
この愛しさも恋しさも全部私のもの。
誰にもあげない、彼以外には。