*【福田】ブルースカイブルー
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気怠い暑さが残る秋。カン、と乾いた音が響くのと福田が体育館から顔を出したのが重なった。
(いい打球。)
休憩に入り、タオルを持って外に出た。どこから湧き出るのか分からないくらい汗が流れる。
「ホーム!!!!」
よく通る声にそちらへ目を遣った。見覚えのあるブルー×ブラックのミット目掛けて球が返ってくる。
(外野、肩いいな。)
返球とランナーが駆け込むのはほぼ同時、捕球したキャッチャーは躊躇いなくランナーにタッチ体勢に入る。勢いよくホームにスライディングするランナーに比べるとキャッチャーは小柄だ。案の定、彼女は吹き飛ばされ転がった。しかし、すぐに体勢を整え、投げる構えを見せた。
(っぶねぇ。)
「アウト!」
「う、わぁ…激しいなぁ。」
植草の声に、そちらを見下ろす。彼は福田を見上げるとドリンクを差し出す。
「おつかれ。ソフト部すごいね、あれって紅白戦かな。」
「サンキュ。多分、そう。」
「本郷だよね、キャッチャー。すげーとんだじゃん。大丈夫かなぁ。」
「…だな。」
福田はそう返すと、水道のある方へ歩いて行った。
「倫乃、大丈夫?」
ピッチャーが駆け寄る。丁度ゲームセットで、休憩を挟むところだった。
「大丈夫…だけど、口ん中切ったわ。砂も入って気持ち悪い。」
「洗って来なよ。」
「そーする。」
そう言って倫乃は防具を外すと、駆け出した。
「いった…きもちわる…。」
「大丈夫か。」
「わ!」
向かいの先客が顔を上げたのに[#dn=2#]は素っ頓狂な声をあげた。声の主は怪訝な顔をしたが、タオルで顔を拭く。倫乃は慌てて口を濯いだ。
「大丈夫か。」
「ん?うん。」
倫乃は顔を上げる。
「口の中に砂利が入ってさ。」
「痛いって。」
「あー…口の中ちょっと切ったかな。でも大丈夫。」
「…人間関係とか。」
「え?あ、ああ。それも大丈夫、言いたいこと言ってやったから。」
「調子は。」
「お陰様で絶好調!」
に、と歯を見せて笑う倫乃に福田も、ふ、と笑う。
「…良い顔してんじゃん。」
倫乃は頬を染める。
(お前が言うなっつーの!)
倫乃は慌てて口元を拭おうとして、タオルがないことに気付く。
「しまった。」
「どうした。」
「タオル忘れた。」
そう言って着ているシャツの胸元を引っ張るとそれで拭く。
「馬鹿、これ使え。」
福田はタオルを差し出すが、倫乃はそれを手で制する。
「ダメだって、福田のなんだから。」
「いいから。」
そう言って福田は倫乃にタオルを押し付ける。倫乃はそれを渋々受け取る。
「…ありがと。」
「使ったやつでわりーけど。」
「全然。助かる。予備持ってる?」
「ない。後で返しに来いよ。」
「はあ?今返す!てか私の使ってないのあるからそれ持ってくよ!」
「あのな、」
口を尖らせる倫乃の手元のタオルを福田は指差す。
「口実だから。…また後で。」
「え?」
そう言って体育館の方へ歩いて行った。倫乃はしばらくその言葉の意味を考えながら遠ざかる背中を眺め、はっと口元に手をあてがう。
「うそ、本当に?」
唐突な一手
(タオルは洗って返すって言おう。)
(本郷、可愛いんじゃん。)
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【背中】の続き。