*【岸本】Courage et fierté
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思えば、初めて言葉を交わしてから
1年も経っていない。
「は?一緒に住むん?」
おばちゃんに用事があって話をしていて、一応ちゃんと言っておいた方がいいかなと思い、報告する。あのアパートに決めたのも職場と、おばちゃんの家が近かったから。実家の家族もそれで安心してくれたし。
でも、状況は変わって。未だつかまらない不審者に怯えながら過ごすのは嫌だった。実理さんと一緒にいたいとも思った。その実理さんが、一緒に住もうと言ってくれた。嬉しかったし、安心できるからそうしたい。
「うん…。また変な人来たら怖いし。」
「それはそうやけど…。」
おばちゃんは、うーん、と少し考える素振りを見せた。
「言うて2人とも大人やしなぁ。おばちゃんがなんか言う筋合いもないわな。」
「でもお世話になってるし。なんか思うところあったら言って。」
「実理ならええんちゃうん。よくわからん男やったら反対やけど。ストーカーも気味悪いから安心は安心やわ。」
わはは、とばかりに豪快に笑った。岸本さんにしゃべっちゃお〜とか言ってる。それはやめてあげて欲しい…。
「折角紹介してもらったのにごめんなさい。」
「ええねん、大家さんにもちゃんと話つけたるから、詳しいこと決まったらちゃんと言うんよ。」
「はい、ありがとうございます。」
実理さんのお家の契約更新の時期に合わせて引っ越すことに決め、新しいお家を探す。職場との距離とか、駐車場の有無とか。内覧に行ったりもして。烈くんもこんなことしとったんかな、想像すると少し面白い。彼女さんと相談しながら?あの烈くんが?
「麻衣、なに笑ろてんねん。」
「え、笑ってました?」
「おお、にやにやしとる。」
「なんだか楽しくて。」
「そーかあ?」
「そうですよ。実理さんは?」
「疲れた。」
「あはは!」
きっと烈くんも同じこと言うんだろうな。この2人はよく似てると思う。タイプは違うんだけど、考え方が似てるっていうか。
何軒か見て回って、帰宅する。夕方、日曜だから明日も仕事。一緒に住むまでは、さようならを言わなきゃいけない。夕飯を食べて、またねで別れて、また一週間。
「そんな顔すんな。」
家まで送ってもらって、玄関の土間で実理さんが困ったように笑う。
「離れ難くなるやろ。」
そう言って、私の両頬を包み、優しく口付ける。
「麻衣。…もう少しやから。」
その言葉はどこか重みがあって、別れ際の笑顔はとても幸福そうで。
何故だかわからないけど、涙が出そうになったの。
どこまでも深い、あなたの愛。
こんなに想われていていいのかな。
私はちゃんと同じ熱量で返せているのかな。