*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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「佐和ちゃん、手強いでしょ。」
「え?」
「違った?彰くん。」
可愛らしく首をかしげるその女性は、とても聡明な目をしていて、誤魔化しがきかないのは明白だった。
「……俺の周りには鋭い女性が多いな。」
「美代ちゃん?」
「はい。」
「あの子面白いわよね。気が合うのよ。」
(分かる気がする…。)
仙道は食器を洗い、由佳は餃子をフライパンに並べながら続ける。
「佐和ちゃんね、ヒロくん…千尋くんによく似てるのよ。人たらし具合が。」
何やっても暖簾に腕押し、全然伝わらなくてね、とクスクス笑う。
しかし、仙道の方を見て、微笑む。
「でも、急にスイッチが切り替わるみたいなのよね。ヒロくんはそうだった。佐和ちゃん、彰くんに心許してるみたいだし、きっと大丈夫よ。…その時まで彰くんが待っていられれば。」
「…はい。」
高辻家はそうなのかしら。と餃子を並べたフライパンに水を入れフタをし、火を点けた。
「…あれ。」
「あ、こんにちは。お邪魔してます。」
佐和の兄、千尋が顔を出す。仙道を見て驚いていたが
「ヒロくん、彰くんお夕飯に誘っちゃった。いいよね?」
由佳が経緯を説明する。千尋は微笑んで頷く。
「ああ、勿論。ありがとうな、彰。佐和は?」
(普通に名前で呼ばれてるな、俺…。)
そんなことを思いつつ、千尋を見て、顔立ちが確かに佐和に似てるな、と納得する。
千尋は由佳に向き直って話を続けていた。
「由樹と由衣お風呂に入れてくれてる。」
「そうか。じゃあもう少し店の方にいるな。」
「うん。お夕飯は一緒に食べられる?」
「ああ、もう父さんたちに任せて来るよ。仕込みも殆ど済んでるし。」
そっか、と由佳は笑う。千尋は仙道の方に向くと
「彰、勉強は大丈夫か。」
その言葉に仙道は苦笑いで返した。
やがて洗面所の方からドライヤーの音が聞こえて来た。そしてドタバタとけたたましい音ともに双子が飛び出してきた。
「おかえり。」
「あきらただいま!おてつだいしてるのか?」
「そうだよ。」
箸を並べ、食器を配膳する仙道に由樹が声を掛ける。
「あきらくーん!」
「おおっと。」
由衣が勢いよく仙道の足に抱きつく。仙道はその頭を撫でてやると由衣は恥ずかしそうに笑った。
「…やけに懐かれてんな、せんど」
「あきらくん、だよ、佐和ちゃん。」
「…わかったよ。」
佐和は渋々了承すると、
「彰、勉強大丈夫だったか?時間取っちゃってごめんな。」
「んーん、楽しい時間を過ごさせてもらえてありがたい。」
そう答えながらも、緩む頬を引き締めるのに精一杯だった。
「少なくとも、買いに来る女の子たちの間で人気だよな、彰は。」
千尋が言うと、
「そうだね、よく話題になってる。分かる気がする〜。」
と由佳が笑う。
「話してみたらすごくいい子だもん。」
「ありがとうございます。」
「騙されてるよ。彰はバスケ以外ポンコツで有名なんだから。」
「あきらくん、ぎょうざじょうずだよ。」
「…確かに。」
由衣の言葉に納得する佐和を見て仙道は笑う。
「こんな佐和ちゃん、学校では見られないな。」
「そうかな。」
「そうだよ。いいお姉ちゃんしてる。」
「…どうせ私はわんぱくな弟だよ。」
なにそれ、と仙道含め大人たちが揃って首をかしげるので佐和が先輩との会話を説明すると、千尋は頭を抱え、由佳は唖然とし、仙道は笑いを堪えていた。
「な、なんだよ!」
「武勇伝が過ぎる。」
「佐和ちゃん、彰くんにそんなことしたの…?」
「だからか……。」
(だから女の子たちは佐和のこと眼中にねーんだ。)
双子はそんな大人たちをよそに、さっさと食事を済ませて遊びに戻っていった。
(……彰は本当に人たらしだな。)
(え、それ、佐和ちゃんが言う?)