*【岸本】Courage et fierté
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絡められる指先。流れていく映像。
お前は本当に、俺でええんか。
試合が終わった。あの日の涙も、悔しさも、身勝手なものだと我ながら呆れてしまう。ただ、あの時手に入れたもの、感じたこと、…取り戻した気持ち。それは今の自分を作り上げるのにどれも必要なものだった。
頑是なさ、というにはあまりに粗野で乱暴な己をなかったことには出来ない。するつもりもない。
「相手の10番と11番、抜群のセンスを感じました。」
「おお。あれで1年やで。」
「うそ。」
「次の山王にも勝ってるし、11は沢北とマッチアップしよってん。」
「え、山王!の、沢北さん!?」
「やっぱそれは知っとるんや。」
「あまりに有名で!」
赤頭はその試合で負傷したようだったし、次の愛和戦で湘北は敗退した。そういえば雑誌で読んだ、流川も桜木も渡米したとか。あいつらならやっていけるんやろうな。
「白の7番、あの速さと視野の広さ、パスセンス、最高ですね、羨ましい…!」
「どうやねん。ツヨシクンは。」
「やめてくださいよ、それ。」
麻衣は苦笑いをしてこちらをみる。そして小さく息をつき、チャプター画面を表示するテレビの方に顔を向けた。
「…故意ではなかったと、願いたいです。」
「そうやろな。」
「バスケ、楽しかったですか。」
「…今は楽しいで。」
「あの時は。」
「最後は、楽しかったで。」
「そうでしょうね、顔つきもプレーも研ぎ澄まされていました。」
「わかるんやな。」
「わかりますよ。」
敵わんな。
「あの時、北野さんが観にきててん。目が醒めた。」
「北野さん…ミニバスの。」
「豊玉入ったのも、北野さんがおったからや。」
「そうだったんですか。」
「…長なるで。」
「構いませんよ。教えてくれるんでしょう、全部。」
その微笑みが、俺の理性をなぎ払う。恐ろしい女や。
「麻衣。」
「…実理さん。」
それを契機に、唇を重ねる。リモコンを操作し、テレビを消す。ゆっくりと床に倒し、角度を変えて啄むように何度も口付ける。舌を潜ませれば素直に受け入れ、絡め合う。決して慣れているわけではなさそうだが、初心でないことも窺えた。
唇を離し、ベッドに寝かす。顔の横に手をついて、確かめるように口を開く。
「今更やめてくれいうてもやめるつもりあらへんからな。」
「今更やめるなんて言ったら口きかないから。」
「強気やんけ。」
「…私が知りたいのはツヨシクンじゃない。岸本さん、…実理さんのこと。」
「はは、負けたわ。… 麻衣、好きやで。」
「私も、実理さんが…好き。」
行為が進むにつれ、細い体が悲鳴にも似た甘美な声を上げる。それは俺を煽るだけで、さらに苦悶の表情は油を注ぐだけだった。
慈しむことが出来たのかは分からない。ただただ麻衣が欲しくて、欲望のままに抱いてしまったかも知れない。腕の中の麻衣は安堵しているような呼吸を繰り返すので、それに酔い痴れてもいいのだろうか。
「…愛してる。」
額に口付け、目を閉じる。このまま、麻衣が起きなければ眠ってしまおう。
と思っていたが、間もなく目覚めてあまりに情けない声を上げるものだから、笑いが止まらなかった。さっきのあの威勢の良さはどこへいったんや。
「き、き、き、岸本さんっ…私…っ!」
「なんや、もう岸本さんに戻るんか。」
「や、やめて!思い出させないで!」
「そんな照れなくてもええやんけ。」
「いや…なんなん私…穴があったら入りたい…。」
「可愛かったで。爪はちょっと痛かったけど。」
「やめ!…えっ、爪!?ごめんなさい!」
「うそ。」
「うそかい!」
好きやなぁ、これも。
さて、ゆっくり話をしようか、さっきの続きを。
愛し合うのに、理屈はいらない。
麻衣を愛している。
それだけが理由。それだけで充分。
