*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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「ねえ、聞いてもいい?」
仙道は口を開く。
「暗い所にいい思い出がないって、何があったの?」
仙道の方を見上げた佐和は、すぐに目を逸らした。
「珍しいね、仙道が他人の話掘り下げるの。」
その言葉に仙道は目を見開く。
「そうかな…。」
「そうだよ。」
佐和は、笑わないでね、とワンクッション置いて話し始めた。
小学校高学年の頃のことだ。
男子よりも女子の方が身体の成長が早く、例に漏れず佐和も身長が伸び、みるみるうちに男子の身長を抜かしていった。
「それで、中でもちっさかった男子たちが勝手に逆恨みしてさ。そんなんどうしようもないのにな。」
特に人気のない視聴覚室の掃除道具入れロッカーに佐和を押し込んだ。
そしてその男子たちにロッカーの外側からガンガンと蹴られたり殴られたり。
「痛くはなかったけど、音が凄かったなー。」
そのせいでロッカーが開かなくなり、外に出られなくなってしまった。
「そういう日に限って雨と雷が激しくてさ。」
開かなくなって焦った男子たちはどこかへ行ってしまい、取り残された。ひとり残された孤独感に、激しい雷雨は精神的にこたえた。
「でも、私がいないことに先生がすぐに気付いてくれて、探しに来てくれたんだ。」
多分、その男子達が白状したんだろうけど、と佐和は笑って話す。
仙道は口を開こうとしたが、それを佐和が遮る。
「着いたよ。店はそこだけど、家にはこっちから入るんだ。」
「佐和!」
「ただいま由樹、起きてたんだ。」
「おきたよ!佐和も由衣もいねーし!…そいつだれだよ。」
双子の兄、由樹は仙道に気づき、少し驚きながら指をさす。
「指差すな。私の友達の彰くんだよ。」
「佐和のかれしかよ?」
「違う。」
(返事すらさせてもらえなかった…。)
仙道は苦笑いしながらしゃがみ、「はじめまして」と笑う。
「あきら、佐和はやらねーぞ。」
「彰くん。」
「佐和うるせー。」
「あぁ?」
「…あきらくん。」
「よし。」
すると奥から由佳がやってくる。
「あら、仙道くん。こんにちは。」
「こんにちは。すみません、突然。」
知り合い?と佐和が由佳に尋ねると、ご贔屓さんだから、と微笑んだ。
由佳は、眠る由衣を抱っこしている佐和と荷物を持っている仙道を交互に見て、状況を察すると、
「いいえ、こちらこそ。ありがとうね。」
上がって。と言ってスリッパを出す。
「あ、いえ、俺はこれで…。」
仙道は断ろうとしたが、
「お米、運んでもらえると助かるのだけど。」
と由佳が笑顔で押し切った。
「彰くん、良かったらお夕飯食べていかない?」
由佳が誘うと仙道は苦笑いし
「そこまでは申し訳ないですよ。」
「あきらくん帰っちゃうの?」
目を覚ました由衣が仙道の足を遠慮がちに掴んで見上げる。
「…ご馳走になります。」
「そうしてくれると嬉しいわ〜。」
(なんだろう、なぜか逆らえない…。)
「彰くん、佐和ちゃん、餃子包んでくれる?」
「りょーか〜い。」
「わかりました。」
ダイニングテーブルで英単語を覚え合っていた2人に由佳が声をかける。
「仙道出来るの?」
「得意。」
「マジで?意外。」
包みながら佐和は「おお」と驚く。
「大きな手の割にすごく繊細な指先。」
「意外とバスケットボールは繊細なんだよ。」
「それ適当言ってんだろ。」
「ははは。でもボールって結構繊細なのは本当。」
「ふーん?仙道はテクニシャンなんだ。」
その言葉に吹き出しそうになった仙道は咳払いで誤魔化す。
「佐和ちゃん、せんどーじゃないよ、あきらくんだよ。」
遊んでいた由衣がテーブルに寄ってきて言う。
「え?」
「あきらくんなんでしょ?」
「仙道彰だよ。」
「あきらくん。」
「…彰くん。」
由衣に押し負ける佐和に、仙道はたまらず笑う。
「わ、笑うなよ。」
やがて餃子を包み終えると、双子がお風呂に入る!と騒ぎ始めた。
「え?もう少ししたらヒロ兄来るから待てって。」
「入るー!」
「あきら入ろー!」
「それはちょっと遠慮しておくよ。」
わかったわかった、と佐和が2人を宥める。
「私が入るから静かにしな。はい、フォーメーションB!用意!」
ラジャー!と2人は敬礼してバタバタと走っていった。
「仙道ごめん、ちょっと外す。ゆっくりしてて。」
「いいよ、ごゆっくり。」
そう言って佐和も部屋に引っ込み、やがて出て来ると、パジャマを持ってやって来た双子を伴って洗面所に入っていった。
「彰くん、申し訳ないんだけどこっちちょっと手伝ってもらっていい?」
「はい。もちろんです。」
(賑やかですね。)
(双子は大変よ〜。)