*【藤真】彼はグリーンのサウスポー
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熱も下がったので登校すると、いつも通り沢上は女子と談笑していて、こちらに気付けば、おはよ、といつも通り声をかけてくる。昨日のことはまるでなかったかのような清々しさは今朝の雲ひとつない青空と同じだ。
「藤真、課題意味わかった?」
「俺を誰だと思ってんだよ。まだ見てもいねえ。」
あはは!と笑うその表情に胸が騒つく。可愛いな、と思ってしまう自分がいて。いやいや、昨日体調悪くて心身共に弱ってる所にちょっと優しくされて絆されただけだって。いつものこいつみてたらまたすぐ元通りになるに違いない。そうだ。そのはずだ。
「沢上、昨日のノートある?写させろよ。」
「はあ?それが人に物頼む態度?」
眉間にしわを寄せて軽く睨んで来たが、すぐに笑い、ノートをこちらに寄越す。今日の時間割にない教科のものまで。
「どーせそんなこと言うだろうと思って。今日使うやつはすぐ返して。」
「わかってんなぁ沢上、さすがマイフレンド。」
「でしょ、もっと褒め称えていいのよ。」
「おい、これ読めねーぞ。」
「無視かい。どれ?…あ、寝てたね。」
みみずがのたうち回ったような字を見て笑い合う。沢上は解読を進め、書き直す。
「そういやお前、花形と仲良いけど同じクラスだったの?」
「1年の時はね。あと、中学が同じ。」
「へえ、知らなかった。」
「わざわざ言わないしね、そんなこと。」
ノートに目をやったまま沢上は笑う。俺はそれを眺めながら続けた。
「沢上はなんで翔陽なんだよ。」
「近所の公立落ちたから。」
「は?翔陽受かるくらいならそうそう落ちねーだろ。」
「インフルエンザかかってさー。気が付かずにへろへろで受験したら何も出来なかった。」
直し終えて、はい、とノートをこちらに寄越す。
「肝心な時に体調崩すなんてね。今年は本当に気を付けないと。」
「サンキュー。そうだなぁ。お前、一般だろ、気を抜くなよな。」
「そうだね、ありがと。」
見たことのないような笑顔を向けられ、心臓が跳ねた。待てよ、見たことないわけないだろ、いつもの笑顔じゃねえか。
「なにぼさっとしてんの。早く写しちゃいなよ。」
「お、おう。」
ついこの間までとは全然違う。
知ってしまった。その気持ちを。