*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私があの子について知っていること。
お兄さんが3人いる。
甥っ子姪っ子がいる。
意外と手先が器用。
怖いものが閉所、暗所、雷鳴。
家訓が『姿勢正しく 礼儀正しく 女子供に優しく』。
それから、
家がパン屋さん。
「弁当忘れた…。」
「食堂行く?」
「…や、届けてもらえそう。」
2限の終わりに佐和は携帯を確認して安堵していた。
「気が緩んでるんじゃないの。」
「金曜だもんなー。」
文化祭も大盛況で、それが終わるとイベントもしばらくなくなり、学内はなんとなく落ち着いた空気が流れる。
季節も変わり、冬が足音を立てて近づいて来るのを感じる気温。
「私立っていいね、空調完備だし。」
「だよねぇ。」
昼休みになると、佐和は美代を教室に残し売店に向かった。
仙道は焼きそばパンとサンドイッチを手に取ると会計を済ませる。
「いつもありがとう。」
と、女性からパンを受け取った時、品出しをしていた男性が仙道に声を掛けた。
「君が仙道くん?」
すると、女性の方も「あ、本当だ!ヒロくんと同じくらい!」と楽しそうに笑う。
「そうですけど…。」
仙道は驚いていたが、男性は構わず続ける。
「クラスの高辻 佐和にこれ渡してくれる?」
渡されたのは、弁当の袋。
よく分からないが、佐和の知り合いならいいか、と思い引き受けてみたものの、疑問が残ってスッキリしない。
「仙道!」
渦中の人物に声を掛けられ、我に返ると、弁当袋を差し出す。
「これ、頼まれた。」
「えっ?仙道が?」
「パン屋のお兄さんに。」
佐和は、ああ〜と苦笑いした。
「それ、一番上のお兄ちゃん。」
「ええ!?聞いてない!そんなに点数取ったの!?」
教室へ戻る道すがら、話題がインターハイ予選に至った。
「わざわざ言うことでもないだろ。」
「43点だろ?1人で?」
「あれ45点だっけ?いや7……?」
「記憶喪失かよ。」
「夏のことだからなぁ。」
「どれでもいいか。とにかくすごいって!」
仙道は佐和が自分よりもはしゃいでいて、なんとなくくすぐったい気持ちになる。
「すげーすげーとは聞いてたし、見ててそれはわかってたけど、数字で言われると迫力あるなー。」
そういえば、と少し前を歩いていた佐和は振り返る。
「その頃って、私、自分のことばっか仙道に話してたかな。聞いてくれてありがとう。」
今度からはもっと聞くようにするな!と快活に笑い、教室に入っていく。仙道も少し遅れて入ると、美代と目が合った。
恐らく会話の最後の方が聞こえていたであろう美代は愉快そうに笑っていて、仙道はそれに苦笑で返した。
(届きそうで届かねえんだよな、この距離。)