*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校卒業編)
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全部全部、幸せになるための大切なピース。
何一つ欠けてはいけない。
「本当に早いな。」
「仙道らしいな。」
藤真と牧は笑いながら控え室に入る。知った顔もそうでない顔も勢揃いだ。
「…窮屈だな、心なしか。」
「サイズ感が規格外なんだよ。特に新郎側が。」
「お、藤真に牧じゃん!久し振り!」
「須藤!お前も呼ばれてたのか。」
「藤真は須藤と知り合いなのか。」
「大学の同期だよ。牧こそ。」
「俺は同じ中学なんだ。」
意外な交友関係に、3人は盛り上がる。一方で美代が越野や植草と談笑していた。
「日下部…じゃないのか。」
「別にいいわよ、そのままで。」
「美代さん、って呼んでもいい?」
「植草ってそういうキャラ?いいけど。」
「神って呼ぶのも何かなあ。俺的には神は旦那の方だし。」
「呼んだ?」
「うお。」
神の声に越野が驚く。植草は、久し振りだね、と笑う。
「福田見なかった?」
「フッキーならトイレに行ったみたい。」
「あいつ急にいなくなるな。」
チャペルに入ると、ヴァージンロードの新郎側は窮屈を極めた。
「せめーな。」
「三井サン、近いんスけど。」
「好きでくっついてんじゃねーよ。」
宮城は抗議の声をあげつつもカメラを入り口に向ける。
「花道と流川にも送らねーと。」
「さすがに帰国はしねーんだな。」
「あいつらが来てもうるさいだけっすよ。」
やがて新郎が入場する。その姿に、溜息をつくものもいたが、多くは笑い声だ。
「まいったな…。」
仙道は苦笑いをしながら進み、所定の位置で待つ。やがて扉が開き、新婦が母親のベールダウンを済ませ、父親と共に進む。
「佐和綺麗…。」
美代と容子の声が重なり、前後の席にいた2人は顔を見合わせ、照れたように微笑み合った。
「お父さん。」
「なんだ。」
「相変わらず姿勢いいね、かっこいい。」
「…からかうんじゃない。」
仙道の前に立つと、父親は佐和を促す。
「娘の結婚式、というのはこの歳になって初めてなんだ。」
「はい。」
「…こんな気持ちになるなんて知らなかった。全く、堪らんな。」
そう言って苦笑いをした。
「はは…。ありがとうございます。」
「頼むぞ。」
「はい。」
父親が席に戻るのを名残惜しそうに見つめる佐和の手を仙道が取る。
「…やめるなんて言わないでくれよ?」
「まさか。」
力強く、だがどこか寂しそうに笑う佐和に、仙道は微笑み掛けた。
「さ、いこーか。」
「ブーケトスって、女の子たちが盛り上がるもんなんすよね?」
「そういうイメージだな。」
「でも、俺も結婚したいんすよね。」
「彩子とはうまくいってんのか。」
「これ取ってプロポーズしますよ、俺は。」
チャペルの外でフラワーシャワーや記念撮影を終えると、ブーケトスの為に準備が進められる。招待客に背を向け、佐和は手元のブーケを見つめる。
「あんまり遠くに飛ばすなよ。」
「分かってるよ。」
「ねえ、彰。」
「ん?」
佐和は傍の仙道を見上げる。
「ありがとうね。」
「え?」
「約束。ちゃんと果たしてくれて。」
「当たり前だろ。」
笑い合って、仙道は佐和の手に自身の手を重ねる。
「手放す気、ないから。」
この上ない幸福も、言いようのない後悔も、全てがここに辿り着く為に必要なハッピーエンドの欠片たち。
「いくよー!」
皆が笑顔になるようにと願いを込めたブーケは、高く高く舞い上がった。
fin.
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〜2019.12.9