*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校卒業編)
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ねえ、約束覚えてる?
俺は一度だって忘れたことはないよ。
「施錠確認してきますねー。」
体育祭、昼休憩を挟み午後の競技が始まる。空になる教室棟を巡回し、施錠をする役割を任された佐和は生徒が残っていないか見て回る。
(懐かしいな。ここから始まったんだ。)
教室を見て回ると渡り廊下のドアを全て施錠する。やがて千尋が毎週使用しているスペースの前を通る。
(球技大会の時に逃げ込んだな。)
職員室に鍵を返しに行くと、少し考えてから鍵をひとつ持ち上げる。その足はそのまま体育館へ向かう。
(他校の女子に絡まれたなぁ。)
体育館前の階段を上り、入り口の前に立つ。
(…ここで、知らない彰を見た。本気モード。)
そのまま武道場へ向かい、鍵を開ける。靴を脱いで場内に向かって一礼をし、中に入る。よく知った景色に、顔を綻ばせる。
(すっごいしごかれてたなぁ。眠くて眠くて仕方なくて、)
床に寝転び、天井を見上げる。
(眠ってしまったこともあった。)
一度目を閉じる。
「ダメだよ、こんな所で寝てちゃ。」
(そうだ、目が覚めたら彰がいた。あの時私は、恋に落ちた。)
しばらくそうしていたが、目を開ける。自嘲気味に笑いながら半身を起こした時、その姿に目を見開いた。
にこにこと笑い、仙道が座っていた。
「…あれ。」
「なにやってんの、グラウンドは盛り上がってるよ。」
佐和は目を瞬かせると、ふらふらと立ち上がる。仙道もそれに倣って立ち上がる。
「ただいま。」
「…おかえり。」
仙道は両手を広げた。
「おいで。本物だから。」
「疑ってないよ、バカ。」
佐和は僅かな距離を駆け出そうとしたが足を滑らせ、倒れ込む。
「あっははははは!」
「わ、笑わないでよ!靴下コノヤロー!」
真っ赤な顔を仙道の胸に埋める。仙道は佐和の背中に手を回して抱き締める。
「やっと佐和だあ。」
「うん。」
「覚えてる?約束。」
「なんだったかな。」
「ひっでえ!」
くすくすと笑う佐和の顎を持ち上げて口付ける。
「かっさらいにきた。」
その言葉に佐和は頭突きをする。
「バーカ、お父さんにちゃんと挨拶してって言った。」
「そうだった。」
体を離して笑い合っているところに、由衣が飛び込んできた。
「佐和ちゃん!…え、あ、彰くん?」
「由衣ちゃんだ。わー、佐和みたい、美人になったなぁ。」
「どうした、由衣。」
「あのね、由樹の借り物がとっても面白いんだけど相応しい人見つからないから佐和ちゃん呼んでって言われて。」
「なんだよ。」
由衣は笑いながらジェスチャーを交えて口を開く。
「お姫様抱っこ。」
その言葉に2人も吹き出す。
「彰じゃん。サイズ的にも。」
「え、由樹そんなに伸びた?」
「私見下ろされてる。私にやらせるの?出来るかな…。」
「俺でいーじゃん。いこ!」
行ってあげて、と由衣は佐和から鍵を取り上げる。仙道は靴を履くと、佐和が靴を履いたのを確認して手を取り、走り出す。
「…っはは、卒業式の日みたい!」
「本当だ!」
笑う佐和につられて仙道も笑う。グラウンドに駆け込むと、仙道は迷わず由樹の方に駆け寄る。騒つく観衆を他所に仙道は由樹を抱き上げる。
「あ、彰!?うお、」
「由樹だ、声も低いなぁ。あはは。」
「マジか、俺、有名人にお姫様抱っこされてんじゃん!やべえ!」
「つかまってろよー。」
仙道と由樹は笑いながらゴールテープを切る。ゴールで待ってた佐和は担当生徒の代わりにマイクを持って駆け寄る。
「カードの中身は?」
「お姫様抱っこ。」
「あはは、俺と魚住さんみたいだ。」
近くのテントからその様を眺めていた田岡がその言葉に吹き出した。