*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校卒業編)
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ここに来れば、会えると思った。
それはどうやら、共通認識だったらしい。
「…彰だ。」
「ただいま。久し振り。」
「元気だった?」
「うん、でもつまんなかった。佐和がいなくて。」
「それは電話で聞いたよ。」
仙道は、そうだったかな、と笑いながら佐和の方へ歩み寄る。佐和は動かなかった。
「もう帰って来ていいの?」
「ううん、また戻るよ。手続きのために少しだけ帰ってきた。」
「…あと少しの期間だけど、編入することにしたんだ。」
その言葉に、佐和は吹き出した。
「…はは、やっぱり。」
「え?」
「気がすむまでやるべきだよ。彰のそういうところが好きだなぁ。」
佐和は微笑んだ。仙道は、首の後ろをかく。
「佐和には敵わねーな。」
自嘲気味に笑うと顔を上げ、佐和の目を見つめる。
「…大丈夫?」
「大丈夫…大丈夫だよ。」
「本当に?」
「本当だよ。」
「佐和。」
「大丈夫だって、本当に!」
「佐和!」
少し語気を強めた仙道に、佐和は自分が下を向いていたことに気が付いた。
目の奥が、熱い。
「佐和。」
「…るせえな、」
「大丈夫じゃないよ、大丈夫なわけあるか!」
「なんでまた離れなきゃいけないんだよ!」
「もう我慢出来ないよ!」
「なんで……?嫌だよ、もう……。」
右の薬指から指輪を外して、指輪を持った手を振り上げる。ややあって、その手を下ろす。
「……なんちゃって、嘘。ふふ。」
顔を上げる。その顔は、涙でぐちゃぐちゃだった。
「大丈夫だよ。平気だよ。待ってるよ。…だから、行ってきて。そうだなぁ、5年くらい待てば足りる?」
その精一杯の強がりに、仙道はひとつ頷いた。
「そこまでお見通しなんだ、俺、佐和じゃなかったら一生ひとりだな。」
仙道はゆっくりと佐和の方に近付き、指輪を握っている手を取る。
「ね、この指輪、貸して。」
「なんで。」
「いいから。」
そう言って指輪を取り上げるとポケットにしまう。そして反対のポケットから何かを取り出す。
「…今度はサイズ合ってると思うんだけど。」
そう言って、指輪を佐和の左の薬指にはめた。
「佐和、次戻って来た時はもう絶対に離さないから。俺の傍にいて。ずっと、一緒だ。」
煌めく指輪に、佐和は目を見開いた。
「彰、これ、」
「俺さ、速攻得意なんだよな。次戻って来た時には佐和をかっさらっていくよ。」
「…はは、ダメだよ、ちゃんとお父さんに挨拶してもらわないと。」
「それがあったなぁ。ちゃんと円満に進めないと。」
困ったように笑う仙道に、佐和も笑顔を向ける。
「…嬉しい。ありがとう。絶対に待ってるね。」
「…ああ。必ず帰って来るよ。」
そう言って佐和を力一杯抱き締めた。
「痛いよ彰。」
「我慢して。忘れさせないために痛くしてる。」
「忘れないよ。」
「でも恋しくなるだろ。」
「そんなの当たり前だろ。どうしたって無理だよ。」
佐和は両手で顔を覆っていた。止め処なく流れる涙は収拾がつかない。力一杯押し返し、仙道の顔を見上げる。
「彰、彰…っ。」
首に手を回して、その名を確かめるように口付ける。仙道はそれに応じ、何度も角度を変えて呼吸を奪った。
「佐和…。」
仙道が、このままじゃどうかなっちまう、と呟いたのに我に返った佐和は、頬を赤く染めて俯いた。
「ご、めん。」
「…ううん、すっげえ嬉しい。」
そう言って仙道は佐和の手を引いて歩き出し、停めてあった車に乗り込んだ。