*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校卒業編)
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手の中に光るアクアマリン。
俺の中の君は、いつも勇敢なんだ。
そんな君に恥じない、俺でいたい。
「フライトの日にち、決まった?」
「うん。」
佐和は予定を確認して、苦笑いをした。
「ごめん、遠征だ。見送りにはいけないな。」
「そっか。うん、大丈夫。いつも通り、怪我なく頑張って。」
「彰も。」
肌を重ねるたびに俺は佐和が足りなくなる。満たされているはずなのに、求めることをやめられなくなる。
…そして、めちゃくちゃ怒られる。
「あのさ、体力オバケなのはわかるんだけど、もう少し手加減出来ないかな。」
「それは佐和のせいなんだけど?」
「人のせいにすんな、ばか。」
「あいたっ。」
軽くはたかれ、いてて、と顔をあげれば困ったように笑う佐和がいる。そんな毎日も、もうすぐ終わる。
出会ってから、こんな長い期間離れることのなかった俺たちは、心中穏やかではない。しかし、佐和が、めそめそしたって仕方ない!と言ってくれたので、毎日笑顔が絶えることはなかった。
「連絡するから。たまには帰るし。」
「あー…いいよ、向こうで気が済むまでやんなよ。彰がそうしたいんならそうすればいいけど、私のためとか、なしな。」
「…ん、わかった。」
「彰が珍しくやる気になってんだし。」
「俺はいつもやる気マンマンだよ。」
「はぁ?」
「…。」
「それみろ。」
「…こんなにわくわくすること、練習じゃなかったわ。試合にしかなかった。」
「そんなんが毎日まってんだよ?」
「たまんねーな。」
着替えながら、今日どう過ごすか話し合う。出掛けたいところは沢山あるけど、それはまた帰って来てからでもいいかな。
「ドライブしよう。」
「どこまで?」
「高校!」
「お、風情があるなぁ。」
「でしょ、埠頭も見に行こうよ。」
「それいいな。ついでに佐和の実家寄る?」
「それは遠慮しとく。帰れなくなるよ。」
夏休みとはいえ、明日佐和はバイトだし、俺も英会話の補講がある。今日の内に帰って来なくちゃ行けない。
「そうと決まったら早く支度しなくちゃ。」
「変わらない!」
「たった2年しか経ってないもん、そう変わらないよ。」
門の外から眺めることしか出来ないけれど、ここまでの道も変わっていなかった。変わったのは俺たち。
「このまま埠頭まで歩こうか。」
「車大丈夫?」
「大丈夫だろ、お巡りさん来たらその時はその時で。」
「春翔に絡まれんぞ。」
「そりゃ大変だなぁ。」
そんなことを言いながらのんびり歩く。気分は高校生だ。私服なのにまるで制服に戻ったみたいで。
「スカートで来ちゃダメって、言ったよな。」
「言われた言われた。懐かしいね。」
相変わらず風がよく吹いていて気持ちがいい。佐和は、長くなった髪を押さえて笑っている。あの時とは全く違う景色だ。
「ね、彰。手出して。」
「こう?」
手のひらに乗せられたのは、俺が贈ったアクアマリンのブレスレット。
「寂しい人には愛が溢れる。」
「…うん。」
「私は、いつでも勇敢で、誠実でいたい。」
「うん。」
「その私を、連れて行って。」
「わかった。」
「だから、泣き虫の私は、ここに置いていってね。」
佐和が泣いた。
本当に辛い時にしか泣くことのない彼女を腕の中に閉じ込める。
「…分かった。俺の中に生きる佐和は、勇敢で誠実で、笑顔の絶えない明るい女の子。」
「それいいね、最強じゃない?」
「うん、最強。俺の恋人は最強なんだ。」
「…嬉しい。ありがとう。」
「だから心配しないで、彰の信じる未来を歩いて。たった2年じゃない。」
その最高の笑顔を、目に焼き付けた。
俺が思い出す佐和は、いつもその笑顔だよ。