*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校卒業編)
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毎日が過ぎていくのは、カウントダウンのよう。
それでも私は、笑顔でいたい。
「高辻!!!」
襲いかかる目眩と、相手の一撃が重なる。すんでのところで弾いたけれど、足がもつれてへたり込む。先輩の声に、いまいち反応できない、
「佐和、顔色悪過ぎ。すみません!休ませて良いですか!」
駆け寄って来た容子がその場で私の面を外した。4年の先輩が脇の下を支えて、立ち上がらせてくれる。
「杉村、ちょっとついてやって。」
「はい!」
「高辻、…そういう日は、無理しなくていいから。」
…こういう日に限って白の袴をはいてしまうあたり抜けている。
「佐和、熱中症だよ。軽度だけど、油断しちゃダメじゃない。」
「悪い…。」
「先輩が、今日は帰って良いって。そんな袴じゃ嫌でしょ。」
僅かに血のついてしまった袴に溜息をつく。なにやってんだ、私。面を付けたまま、容子はベンチに座る私の傍に膝をついて見上げてくる。
「…ほら、図ったようにいいのがきたから。」
「おつかれさま…容子ちゃんに佐和、どうしたの?」
部活終わりの彰が顔を出した。バスケ部はもう終わりらしい。
「佐和、調子悪くて。熱中症っぽいから送ってあげてくれない?」
「そうなの?もちろん!すぐ飲み物買ってくるよ。」
「クラブハウス棟まで取り敢えず連れて行って。防具は片付けておくから大丈夫。」
「ごめん。容子こそ体調気をつけてね、ありがと。」
「いーえ。」
そう言って容子は面紐を整えながら武道場の方へ歩いていく。
「立てる?」
「ん、大丈夫…。」
彰の腕につかまって立ち上がり、ゆっくり歩く。やだな、少しふらつく。
「見に来て良かった。」
「ごめん、ありがとう。」
更衣室から出てエントランスまで行くと、彰がベンチに座って待っていた。私を見つけると駆け寄ってくる。
「お待たせ。」
「ぜーんぜん。」
ずきん、と痛み出す下腹部に、思わず顔を顰める。それに気付いた彰は怪訝な顔をした。
「どしたの?大丈夫?」
「あ…うん、大丈夫。帰ろ。」
「少し休んでからでもいいんじゃない?」
「病気じゃないから…。」
「は、え?あ!あー…そういうことか。」
合点がいったのか、彰は私の腰をさする。
「女の子は大変だなぁ。」
「ありがとう。でも必要なことだから。」
「そうだね。でも無理しないで。そういう時って、怪我しやすいんだろ?関節が緩んだりするって。」
「そーいやそんなこと聞いたなぁ。」
さするのをやめ、私の手を取る。そして歩き出す。
「取り敢えず帰ってゆっくり休もう。」
「うん。」
この手がやがて離れる時が来ても、心は繋がっているから。そう信じているから。だから私は貴方に笑いかけるし、貴方も私に笑いかけてくれる。