*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校卒業編)
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
この先、きっと色んなことがある。
それでもずっと一緒に居られるんだと思っていた。
小さな覚悟をしながら。
「教職忙しい…。」
図書館で机に突っ伏す。今日は、本当なら2限だけ。でも、教職に必要な教科が3限と5限にあるから帰るに帰れない。あーあ!
「レポートやんなきゃいけないし、丁度いいよ、うん。」
彰はバイト…だったかな?最近忙しくしてる。増やしてるのかな、無理してないかな。気になるけど、無理するタイプではないから大丈夫だろう。
後期の試験の後は長い春休み。そして卒業式。つまり、そう、追い出しコンパがある。
…絶対飲んでたまるか。
追いコンは監督達も同席で、ホテルで行われた。無茶する人もいないし、無理強いもされない。
「高辻。」
「先輩!」
女帝が話しかけてきた。お酒が入っているからか、いつもよりも上機嫌のようだった。
「高辻、ありがとね。アンタのおかげで最後結構楽しかった。」
「え?」
「すごいの来たなって、焦ったよ。まだまだ荒削りだけど、絶対大丈夫、アンタはまだまだ上手くなる。」
肩をぽんぽん、と2回叩かれた。その後、少し神妙な表情になる。
「一人で抱え込むんじゃないよ。アンタには杉村がいるし、須藤もいるし、…ハリネズミ君もいるから。ちゃんと頼るんだよ。」
「あ、はい…。」
「アンタが辛い時、力になれなくてごめんね。知ってた。呆れた陰口とか、作為を感じる痣とか。辛かったね。よく頑張ったよ。」
…大したことじゃないと思っていたし、平気だった。でも、誰かが知っていてくれたことが嬉しかった。救われた気分だった。
先輩、私、先輩みたいになりたいよ。
「私は熊本帰って教員になるよ。高辻も教職とるんでしょ、教員大会で会うの楽しみにしてるから。」
「負けませんからね。」
「言うねえ。こりゃ締めてかからんと。」
そう言って、豪快に笑った。なんだか可愛らしかった。
「佐和〜。おつかれ。」
「彰、迎えに来てくれてありがとう。」
もう帰る、と伝えたら彰は快く迎えに来てくれた。寮生はこれからまた寮で飲むらしいけど、私は、家の人に心配されるから、なんて言って帰ることにした、
「どうだった?」
「楽しかったよ。女帝とも話しできたし。」
「そりゃ何より。」
「男の人とは特になにも。」
「はは、大丈夫だよ、わかってる。」
そう言って指を絡ませてくる。自分よりいくらか大きな手は、初めて繋いだ時よりなんとなく逞しさを増していた。
「彰、変わったね。」
「え?どこが?」
「体全体?背も伸びてるし、よりがっちりしてきた。手も、少し違う。」
「そうかぁ?自分じゃわかんねーな。」
「そういうもんだよ。いいな、私はなにも変わらないや。」
「そんなことねーよ。」
彰はそう言って、繋いでいた手を解く。そして私の手の平を指でなぞる。
「胼胝が増えた。筋肉もついてきてる。なにより…」
そこで口をつぐんだ。なんだよ、と言うはずだった唇は、彰のそれで塞がれた。
「…どんどん魅力的になってく。俺、焦る。」
ゆっくり離れていくその表情が、なんだか寂しそうでずっと見つめていた。どうしたの?
「ねえ、彰、何か隠してない?」
「…俺さ、」
「アメリカ、行こうかと思ってるんだ。」
唐突なその告白に、私の頭の中は真っ白になった。