*【南】venez m'aider
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君のことを知りたいのに、開けてはいけない箱のよう。
「じゃあ、俺は高橋送るから。」
「僕も行くわ、みのりんが送り狼にならんよう見張っとく。」
「アホ、こいつ襲うくらいなら他当たるわ。」
「なんやてきしもとぉ…」
「迫力も何もないな。ええからつかまっとき。」
「おお…。」
芽衣は岸本の腕につかまり、歩き出す。やがて土屋がタクシーを呼び止め、乗り込んだ。
「気を付けてね。」
「千聡もぉ…うう。」
「これ、念のため袋もってって。ドライバーさんに迷惑かけちゃダメだよ。」
「南、千聡ちゃんのこと頼むなぁ。岸本よりは信用しとるで。」
「ああ!?」
「…おう。」
タクシーが走り出すのを千聡と南が見送る。ややあって、南が口を開く。
「…帰るで。」
「うん。」
千聡はそれに短く答え、先に歩き出した南を追いかけた。
「あ、ねえ、公園公園!よってこや。」
「アホ、いい大人がなに言って…聞けや。」
千聡の家の近くまで来ると、小さな公園があり、千聡はそちらへ駆け寄っていく。動物のスプリング遊具に跨ると、ゆっくりと揺らす。
「あっはは、まだ乗れる。」
「千切れるで。」
「失礼な!」
「やれやれ。」
南は隣の同じ遊具に腰掛け、足を組んでその膝に頬杖をつく。千聡はひとしきり遊ぶと、また笑い出す。
「南くんのやつ何?パンダ?」
「あ?…なんや白黒やな、そうかもな。ぶっさいくやわ。」
そう言って、パンダらしき乗り物の顔を2回叩く。それをみて千聡は笑うと、こっちはうさぎかな?と耳らしき部分を掴む。
「えげつな。んなとこ掴むなや。」
「あっはは。かわいいやん、これ。」
そう言って千聡は跨るのをやめ、南に向かい合うように座り直す。
「ねぇ、南くん。」
「なんや。」
「…エースキラーて、なに?」
「…。」
打って変わって真剣なトーンで口を開いた千聡に、南は小さく息を吐く。そして、ぽつりぽつりと話し出した。
「…そ、か。」
「…おう。」
暗い中でも分かるくらい、千聡の表情は暗かった。それを見て南はまたひとつ息を吐いた。
(…せやろな。)
「お前がそないな顔することないやろ。」
「するわ。えぐすぎだよ。」
「…そーやな。そう思うわ。」
「岸本くん、上手にはしょってくれてたけど、それでも酷いと思ったくらいなのに。」
「そうか。まあなんでもええわ、なんなら俺の連絡先消せ。でも今日は家まで送る、そこは譲らん。」
そう言うと、南は立ち上がる。
「俺は、赦されようとは思っとらん。…それだけのことをしたんや。」
いつまでも立ち上がらない千聡を訝しみ、顔を覗き込む。
「…でも、今日の試合見て思ったけど、南くんはバスケ好きやん。」
「…。」
「話と違う。全然かっこいいバスケットマンやん。」
「…そうか。でも、やって来たことは消えん。…消せんのや。」
その言葉に千聡は顔を上げる。
「そう思ってんなら、いい。」
「は?」
「何もかも忘れて今を楽しめ、なんて無責任な事はいわないけど、でも、南くんがバスケ続けるなら楽しんでやって欲しい。今日みたいに。」
「…そうか。」
「自分でかけた呪いに殺されることない。怪我をした子たちは、南くんが苦しみながらバスケ続けることが愉快だと思う人間とは思えない。」
「本物のエースって、そんな歪んでるのかな。」
その言葉に南は瞠目し、地面に視線を落とす。
(ナガレカワ…流川は渡米したと雑誌で読んだ。藤真は、日本でプロとして活躍している。俺の事なんか、いちいち気にしとらん。)
「私はやっぱり、自分が知ってる南くんを信じる。誰かから聞いた南くんは、私の知らない人だよ。」
南が顔を上げると、千聡は笑っていた。
「だからやっぱり、連絡先は消せんし、これからも一緒に居りたいなぁ。」
(あかんわ、本山。… 千聡。)
南は千聡の腕を引き、立ち上がらせるとそのまま抱き締めた。千聡は驚き、目を瞬かせたが、やがて背中に手を回す。
「…おおきに。」
「…どういたしまして。」