*【南】venez m'aider
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彼女に惹かれる度に、胸が軋む。
「南おつかれさん。」
「…おう。」
遅れて駆け付ければ、定番となったメンバーがこちらを見る。本山からの連絡に、特に断る理由もなかったから参加することにしたが、なんとなく居心地が悪い。
その理由は分かっている。
「わ、南くん!おつかれさま、準優勝おめでとう。」
「お、う。おつかれ、おおきに。」
席を外していた本山が後ろから現れて驚いた。なんやねんこいつ、昼間の事はなかったことになっとんのか。あの剣幕が嘘のように機嫌よく笑っている。
「座りなよ。何飲む?たちまちビール?」
「…たちまち?」
「あ、や、取り敢えずビール?」
「広島娘かわいいなぁ。」
「からかわんといて土屋くん!」
照れながら言い返す本山が、なんや可愛く見えた。なんなら、たちまち、言うたのも。
…あ?なんやて?
「ビールもらうわ。他何か頼むか?」
「南くん、私焼酎お湯割りー!」
「高橋オヤジやな。」
「岸本うるさい、ハ」
「ゲへんぞ、ボケ。」
「芽衣、大丈夫…?」
「芋か麦か米かどれや。」
「芋じゃ!」
「芽衣ちゃん本領発揮やなぁ。」
高橋は本山にしなだれかかりながら挙手をする。ホンマ大丈夫かこいつ。またトイレ駆け込むんやないか。
「芽衣、あかんかったらやめなよ。」
「そしたら千聡に任せるなぁ。」
「やだよ、あんまし得意じゃない。」
「えー!頼むわぁ!他の男と間接チューとか嫌ぁ。」
「何言ってんのよもー。わかったから。」
店員を呼び、注文をする。間も無くビールと焼酎が運ばれて来ると、いい加減な乾杯をし、ややあって高橋がトイレに駆け込んだ。
「広島では気の利いた飲み屋ってあるん?」
土屋がそんなことを尋ねる。本山は、うーん、と何かを思い出すように唸る。
「八丁堀…流川町あたりが繁華街かな、私が行ったことある洒落たバーは流川町にあった。」
「…ナガレカワチョウ。」
「南くん?」
「あ?あぁ…なんでもない。」
「南、」
「なんや岸本。」
岸本が意味ありげな視線を向けてくる。お前顔がうるさいねん。やめや。
「あ、八丁堀は総合体育館からそこそこ近いとこだよ。バスケの全国大会、開会式そこだったよね?」
別に、腫れ物でも鬼門でもなんでもないはずなのに、その言葉に少し胸が痛んだ。
「…なに、なんなの?私が洒落た飲み屋行くのおかしい?」
「ちゃうちゃう。それより、高橋大丈夫か。」
「あ、そうやね、ちょっと様子見てくるわ。岸本くんありがと!」
そう言って本山は席を立った。男3人残され、陰鬱な溜息が漏れる。
「…南。」
「別に、気にしてへん。過ぎたことや。」
「僕ら昼間に千聡ちゃんと高校の時の話をしたんや。」
「は?」
「お前のことは、お前のおらんとこで聞くつもりない言うてたから、話してへん。」
「…そうか。」
少し安堵した自分に嫌気が差した。あいつに知られては困るのか。そんな虫のいい話ないやろ。
「どうすんねん。隠すんか。」
「…そんなつもりあらへん。昼間の男があんだけ喋ったからな、本山も勘付いとるやろ。」
賽は投げられたんや。どうにでもなればいい。本山にどう思われようが、知ったことではない。
「たとえそれが事実でも、うちにとってはうちが知っとる南くんが全てじゃ。それで良い。」
…知ったことでは、ない。
それが業というものやろ。因果応報なんや。