*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校卒業編)
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本当にすごいと思った。
彼女の実力の裏側にある、
才能と努力と、好きの気持ち。
「女帝越え、おめでとう。」
「やめてください容子さん。」
佐和はそう言いながらも嬉しそうにしていた。私は3回戦で2年生に負けてしまったけど、その相手が決勝で佐和と当たって、佐和が勝った。
この子のことは高校どころか中学の頃から知っていた。実際に会ったのはインターハイの準決勝。試合の後、あの子の方から駆け寄ってきて挨拶を交わした。その時に、あの面はしばらく引きずるよ、と笑っていたのが印象的だった。嫌味のひとつも感じさせない、無邪気な笑顔だった。
「優勝しちゃったね。」
「しちゃった。」
「風当たり厳しくなるかもよ。」
「それはどーでもいい。眼中にない。」
「あら怖い。」
そう言ってにやりと笑う表情は女の私でも見惚れてしまう。自信に裏打ちされた努力を知っているからこそかも知れない。
恋愛にうつつを抜かすこともなく剣道に打ち込めるのは、剣道に恋をしているからなんだと、仙道が言っていた。自分の彼女なのにそれでいいの?と聞いたら
「なんで?それが佐和のいいところだろ。」
と笑っていた。よかったね、物分かりの良い彼氏でさ。私はそれで昔ふられたよ。あーあ、羨ましい!
「あーあ、仙道みたいな彼氏落ちてないかなぁ。」
「え、やめた方がいいよ。」
「アンタが言うな。」
「いや本当に。バスケ以外はポンコツだよ。」
「馬鹿、顔はそんなこと言ってない。」
「あはは、まいったなー。」
「腹立つー。それ仙道がよく言ってるやつ。」
私は溜息をついて空を見上げる。佐和は何もかも上手く行っているように見えた。でも、それは彼女の頑張りあってこそだとわかっているから嫉妬もしない。でも、羨ましいとは思う。
「佐和、容子ちゃん!」
仙道がやってくる。わざわざ迎えに来たの?学校まで?あーあーあー!!
「ごちそうさん!!!」
「なんだよ容子、急に大声出すなよ。」
これが叫ばずにいられるかっての!もー本当にさー。佐和と仙道は目を瞬かせてこちらを見ていた。そりゃそうだ。
「寮まで送るよ、乗って。」
「ね、アンタ佐和を迎えに来るためにわざわざ大学まで来たの?」
「えー…バイトの帰りっちゃバイトの帰りです。」
「でも、待ってたんでしょ?」
「まぁ、そりゃね。」
「本当に仲良いね。腹立つくらいだわ、送れ!」
「はい喜んで。」
「容子、どうしたの…。」
高校時代に辛い時期を送ったのも知ってる。私は2年の時の佐和の横顔を会場の観客席から見ていた。あそこだけ空気が違った。悔しさも悲しみも全部背負って、それでも涙を流さない彼女を目の当たりにした。神様はきっと見ているのだろう、こんなに幸せそうな彼女と友達になれて私はラッキーだ。
「佐和、大好きよ。」
「容子ぉー!」
「あの、いいから乗ってくれませんか。」
「仙道に見せつけてやるわ。」
「容子ー!」
「もー…美代ちゃんといい容子ちゃんといい、なんで俺のライバルは女の子なんだよ。」
美代ちゃんとやらは知らないけど、仙道が悔しそうな顔するのが気分良いから度々からかってやろう。あー最高にスカッとする!
「帰ろ、容子。」
「そうね、仙道よろしく。」
「はーい。」
アンタたちが2人で幸せになってくれたら、と願わずにはいられない。ねえ、神様見てるんでしょう。そう思わない?