*【南】venez m'aider
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女をおっかないと思ったのは初めてやった。
秋季医歯薬バスケットボール大会が大阪で行われると聞いて、千聡は会場に向かっていた。芽衣は予定があるらしく、一人で会場に向かう。土屋と岸本も来るらしいが、まだその姿は見当たらない。
「本山。」
その声に振り返ると、南が立っていた。部のウィンドブレーカーを着ており、千聡は感嘆の声を上げる。
「南くん、かっこいいそれ!」
「そうか?おおきに。」
「スポーツマンだねぇ。白衣とはまた違うわ。」
「一緒なわけあらへんやろ。」
「そうだけど。」
「1人か?」
「岸本くんと土屋くん探してるんだけど、見当たらないけぇ、歩き回っとった。」
そう言って千聡はきょろきょろと見回す。すると、視線が一点に集中していることに南は気付いた。
「なんや、おったか?」
「あ、や、ちが」
「千聡やんけ。」
私服の男が、よお、と言って近付いてくる。隣の南を見ると、おや、と少し驚いた顔をした。
「なんや、南とおる…。」
「…?」
「まーたけったいな奴と付き合ってるんやな。
「付き合ってないよ。友達。」
「へえ、どちらにせよ、相手は選ぶもんやで。」
「意味わかんない。南くんのこと悪く言わんとって。」
男は南の方を見てニヤニヤ笑う。
「エースキラーやろ、俺らの学年でこいつを知らん奴はおらんで。」
「…!」
千聡は首を傾げる。南は眉間にしわを寄せた。
「こいつとバスケすると怪我するからなぁ。」
「よくわらんけど、自分は怪我したことないんじゃろ。高校時代は皆勤やったて自信満々だった。」
「…よー覚えとんな。」
男は不機嫌そうな表情で鼻を鳴らした。
「そいつはエースキラー言うて、全国で相手のエース再起不能にさせてん。」
「なに、それ。」
「そのまんまや。なあ、南?」
「……。」
「おーこわ、睨むなや。怪我させられんよう気を付けることやな。」
口を開かない南を訝しむ千聡。
「返す言葉もないやろな、事実やし。」
「…黙りや。」
「あ?」
「そがいに相手貶めてなにが楽しいんじゃ。」
「本山?」
南は、怒気のこもった声を漏らす千聡を見下ろす。男も眉間にしわを寄せて千聡を見た。
「たとえそれが事実でも、うちにとってはうちが知っとる南くんが全てじゃ。それで良い。」
(…本山。あかん、やめろ。俺は、)
「何言うてんねん。お前が知らんこと教えてやっとるんやろ。」
男の手が千聡の肩に触れる。その手を千聡は払い退ける。
「いらわんとって!他人様の悪口ネチネチ言いよってから…もうアンタは信用しとらん、いぬれ!」
「…物騒なモン同士お似合いやわ。」
男が舌打ちして去ろうとしたところで、新たな声が加わった。
「わー、千聡ちゃん、すごい迫力やわ。」
「おお、えらいもん見たなぁ。」
土屋と岸本が笑いながら歩いてくる。男はその姿を見て口を開けた。
「土屋…に、岸本…?」
「お?僕の事知っとるん?」
「そらお前、高校時代大阪でバスケしとった奴ならお前のこと大体知っとるで。」
「みのりんも有名やーん。」
「まーな。」
目を瞬かせる千聡をよそに、土屋が男に向き直る。
「で?まだなんか用?急いどるんやけど。」
「千聡ちゃんかっこよかったで〜。」
「おお、広島の女は怒らすとおっかないな。というか、芯が強いな、本山。」
南は、集合時間が、と言って去っていった。3人は観客席に座ると、先程のやりとりについて話す。
「あの人とはどういう関係なん?」
土屋が首を傾げる。
「…元彼なんよ。私、大学通ってる時に球場でバイトしとったっていったでしょ、その時、観に来てた彼に声を掛けられて。」
「マジか!んなことあるんか!」
「みのりんにはないで、安心しい。」
「なんやと!」
2人のやりとりに千聡は声を出して笑う。すると、コートに南始め選手が現れたので3人はコートを見下ろす。
「スタメンやろか。」
「まーそうやろうな、南は。」
「へえ?」
やがて始まったゲームに、千聡は言葉を失った。
(南くん、げに凄い選手やん…!)
土屋と岸本の解説を聞きながら、千聡はゲームにのめり込んでいった。
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そがいに:そんなに
いらわんとって:触らないで
いぬれ:どっかいけ
げに:本当に