*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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体育祭が終わってから、周囲の様子に変化を感じていた。
「高辻、あんた上級生のお姉様方からの好感度が高騰してんだけど。」
練習後の部室で先輩からそんな話を聞いた。佐和は全く心当たりがないのだが、話を聞くにどうやらインターハイと体育祭にあったようで、
「インターハイでは個人準優勝しちゃうし。」
「借り物競争で同級生お姫様抱っこして走ったり、迷子抱えて親を探したり、リレーで激走したり…。」
「わんぱくな弟みたいな感覚らしいよ。」
「お、弟…?」
「仙道くんに飛びついちゃうし。」
「あれは面白かったよね、仲良し兄弟?男友達かよ!って感じ。」
あはははは!と爆笑の渦の中、佐和は頭を抱えていた。
翌日、美代にその話をすると同じように爆笑していた。
「わんぱくな弟…くくく。」
「美代笑いすぎ。」
「マジで似合ってて…ふふ。」
うーん、と佐和は呻る。美代は笑いを収めると「でもさ、」と話し始める。
「わんぱくな弟、だから、仙道にあんなことしても女子たちはざわつかないんじゃん。」
「私だもんな。」
「佐和のことは眼中にないってことだね。」
(仙道は佐和しか眼中にないってのに。)
あー不憫、と美代はくすくすと笑う。
「なに、美代。まだウケてんの?」
「そんなとこ。」
「仙道最近それハマってんの?」
「ん?んん。」
昼休み、越野が焼きそばパンを指差す。仙道はもぐもぐと食べながら返事をする。植草も気になり尋ねた。
「毎週金曜だけ売店に来るパン屋さんの?」
「んん、そう。うまいよ。」
「店員さんが美女とイケメンの夫婦。」
仙道と越野のコメントに、植草は「今度俺も行こっと」と言いながら弁当をつついていると、視線を感じて顔を上げた。
「ほら、バスケ部いるよ。」
どこかのクラスの女子何人かが教室の入り口からこちらを見ていた。
「最近増えたよな。」
越野は顔も上げず淡々と弁当を食べる。
「そう?」
仙道も全く気にする様子もなく食べ進める。
(あれ…?このクラスではこれが日常なの…?)
植草も弁当を食べていたが、やがて影が落ちてきて3人とも顔を上げる。
そこには佐和が立っていた。
「これ、あの子達から。」
仙道に包み渡す。仙道は表情を変えずに中を見て、すぐに入り口の方に笑顔を向けた。
女子たちは色めき立つ。
「うわ、なに、仙道っていつもこんな感じ?」
植草が少し引くと、越野は頷く。
「体育祭でさらに増した。」
佐和は笑ってその場を去った。
仙道はその後ろ姿を見ていた。
(他の誰でもなく、君がいいんだけどな。)
「ねえ美代、文化祭の準備って進んでるの?」
「やってるよ、あんたたちが体育祭の仕事やってる間こっちはこっちで動いてたんだから。」
うちのクラスは何やるの、と佐和が尋ねると、美代はニヤリとし
「カフェ」
と短く答えた。
その笑いに佐和は少し引く。
「何か企んでる…?」
「失礼ね。でも集客のことは考えてる。」
頼りにしてます、と佐和が言うと、
「あんたにはしっかり餌になってもらう。」
と美代は佐和の頬を撫でた。
(…なにをさせられるというのか。)