*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校卒業編)
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目を覚ましたら、誰も居なかった。
仙道は佐和をベッドに寝かすと、部屋の鍵を持ち、一度外に出る。
(何か、食えそうなもんと、飲み物も要るかな。)
スニーカーのかかとを整え、歩き出す。近くのコンビニに入ると、容子の姿を見付けた。
「容…杉村さん。」
「あれ、アキラくんじゃん。佐和のこと送ってくれた?」
「うん。よ、杉村さんは」
「…容子でいいよ、別に。」
容子は可笑しそうに笑うと、で?と続きを促す。
「体調、どう?」
「疲れた。でも腹減った。」
「あはは。わかる。寮近いの?」
「ううん。近いとこだと先輩に会うから…気まずいっしょ。」
確かに、と仙道は笑い、自分もカゴにいくつか食べ物や飲み物を放り込む。
「…それ。」
「ん?」
「佐和に?」
「なんで?」
「や、なんとなく。好きそうだなって。」
容子の指摘に、仙道はなおも笑った。
「容子ちゃん、佐和のことよく分かってるんだ。…安心だなぁ。」
「どういう意味よ、それ。」
「そのまんまの意味だよ。佐和のことよろしくね。あと、容子ちゃんも早く休みなよ、顔色悪い。」
そう言ってレジに向かう仙道の後ろ姿を容子は見送った。
(言われなくてもそうするけど。)
「仙道!」
「んー?」
「佐和に伝えて、あんま自分追い込むなって!」
「はーい。…やれやれ。」
(やっぱり。)
容子の言葉に、仙道は肩をすくめた。会計を済ませると、雑誌の棚を眺める容子の肩を叩き、もう一度声を掛ける。
「気を付けて帰ってね、容子ちゃん。」
声を掛けられると思っていなかった容子は、目を瞬かせた。
佐和は目を覚まして、体を起こす。羽織っていた上着は脱がされていたが、帰って来てそのままの格好だった。
(彰は…。)
辺りを見回すが、誰も居ない。しん、と静まり返った部屋で、急に孤独感に包まれた。
(どこに行ったんだろう。)
『アメリカ行くとか。』
「…!」
急にフラッシュバックした神の言葉に、慌ててベッドから立ち上がる。それとほぼ同時に玄関のカギがあけられ、ドアが開く。
「あき、らっ、うわ!」
「え、あ、おい、大丈夫か!」
佐和は仙道の方に駆け寄ろうとしたが足元の鞄に躓き、床に突っ伏した。帰って来た仙道は靴を脱ぐと膝をついて佐和の顔を覗き込む。
「珍しいな、こんな風に転ぶなんて。」
「あ、ありがと。」
笑いながら手を差し伸べる仙道に、佐和は縋るように掴まる。
「え?どうした?」
「どこ、行ってたの?」
「コンビニ…佐和、腹減ってない?あと、喉乾いたとか…。」
「あ、うん、喉…」
そう言って立ち上がると、佐和は躓いた鞄を部屋の隅に寄せ、ひとつ息をつく。
「体調、どう?眠れた?」
「大丈夫、なんか平気みたい。」
「顔色はそんな感じしないけど。」
「本当だって、さっきみたいな熱っぽさもないし。」
佐和は首や耳の後ろに触りながら困ったように笑う。仙道はレジ袋からポカリを出すと手渡す。
「水分取ったらもう少し寝なよ。疲れてるんだって。」
「ありがと。…でも、折角彰が居るのにもったいないじゃん。」
ベッドにもたれるように座ると開栓して、ごくごくと喉を鳴らす。ふう、と息をつくと仙道と目が合った。ボトルのキャップをしめながら首を傾げる。
「え、なに?」
「佐和、なんか変だよ。」
「はあ?」
「俺、ここに居るから、だから休みなよ。」
「…本当に?」
「うん。なに、疑ってる?」
「…。」
「佐和?」
本当にどうしたの、と首を傾げる仙道に、佐和は首に手を回して抱きついた。
「え、は、」
「彰、居なくなったかと思った。」
「ごめん。」
「やだ。許さない。今だけはここに居て。絶対居なくならないで。」
「…佐和?」
佐和は少し体を離し、呆ける仙道に口付ける。やや躊躇いがちに、しかし惜しむように、何度も。
「今だけでいいから。…先のことは、分からなくていいから。」
「佐和…。」
堪らず仙道は床に佐和を押し付け、舌を絡ませる。服の下に滑り込んでくる手の感触に佐和は身を強張らせる。
「もう、止めてやんねーよ。」
「構わないよ。」
「…。」
「…彰?」
「佐和、変。」
仙道はそのまま佐和を抱き締め、ベッドに運ぶこともなく、やや怪訝な表情を浮かべたが触れることもやめなかった。
佐和はぼんやりと天井を眺めていた。