*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校卒業編)
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就寝前、合宿所の休憩スペースのベンチに座って、佐和と電話をしていた。
「よ、呼び出された?」
俺、こんなに素っ頓狂な声を出すこと、今までの人生でそんなになかったよ。
佐和って、本当に、…刺激的。
俺の声に、受話器の向こうで佐和が少し驚いていた。その後また小声で返してくる。
『べ、別に叱られたとかそういうんじゃ…いや、ちょっとは叱られたけど…。』
「大丈夫?」
『全然平気。』
「ていうか、ごめん、どうしてそうなったのか聞いてなかったわ。」
『だよね、なんか私が悪いことしたみたい。』
「違うの?」
『違ぇよ。』
声を抑えながらもやや不機嫌そうな佐和に、俺はくつくつと笑った。
『閻魔帳がバレて。あ、じゃなくて、』
「悪口でも書いた?」
『そんなわけないだろ、小学生かよ。先輩と監督に、何で黙ってたんだって。』
「はは、わざわざ言わねえよなぁ。こちとら1年だし。」
『ねー。ただのメモなのに、有益な情報になり得るんだからちゃんと言えってさ。まいったな…。』
「それ俺の俺の。」
『うわ、うつった。』
すると、急に携帯が取り上げられるので慌てて後ろを振り返る。
「佐和かぁ?オレオレ、俺だって。」
「藤真さん、返して下さい。」
藤真さんはハンズフリーモードにすると佐和に呼びかける。
『わ、藤真さんみたいな声がする。』
「みたいじゃなくて本人だっつの。」
『おい佐和、なにやってんだ。』
後ろから小さく聞こえた声に、俺はぎくりとした。知ってる、この声。
『須藤さん、なんすか?』
『女帝が探してんぞ。』
「須藤須藤、女帝って誰だよ。」
『藤真さんうるさい。』
『なに?藤真と電話してんの?』
『乗っ取られてんだよ。』
俺の携帯から野郎の声が聞こえる。やだなぁもう、癒しの時間なのに…。藤真さんから携帯を取り上げると、通常の通話に切り替える。
「佐和、しっかり休んで明日からも頑張ろうな。」
『あ、ああ、うん。彰もゆっくり休んで。おやすみ。』
「おやすみ。また明日。」
通話を断つ。まだまだ折り返し地点、やれやれと溜息をついてしまう。それを見て藤真さんが肩をすくめる。
「青春だよなぁ。」
「いいですよ、青春。」
「お、余裕出てきてんじゃん。」
「…まー、それなりに。」
藤真さんは笑いながら俺の背中を軽く叩いた。俺は、後ろから聞こえた須藤さんの声にまだ少し動揺していた。
もう、平気なはずなのに。