*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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あの言葉遣いは男兄弟の中で揉まれた為だったのかと合点がいった。
そして、男が触れてきてもあまり気にしないところは、変に男に免疫がついてしまっているせいなのかも知れない。
(そんなん危険だろ。)
最後のリレーは学年別、クラス選抜のリレーで、各クラスの選りすぐりの男女合わせて4人で組む。
それぞれトラックのスタート位置でアップする。佐和としては、自分と仙道以外が陸上部であることに安心して構えていた。
「っても俺、中距離だからあんま自信ないんだよな。」
「大丈夫だろ、第1走者とアンカーは足に覚えありだろうし。」
「だな。」
ウシ、と拳を打ち付け合い、男子の方はラインに立つ。佐和は第3走者、反対側に居る仙道がアンカーだ。第1走者の女子は短距離専門なのでまず問題はない。
(頼むぞ〜。)
祈りながら仙道の方をチラと見ると、仙道もこちらを見ていたので拳を軽くあげる。すると同様に拳を軽く上げたので、ウシ、と声を出す。
(問題があるとすれば、私だけだ。)
ピストルが鳴り、レースが始まる。
佐和のクラスの女子はやはりトップでバトンを繋ぐ。そのバトンを受け取った男子もなかなか速かったが、恐らく短距離が本職であろう走者がグイグイ追い上げてくる。そのまま2位につけてやって来た。
(緊張する…)
佐和はタイミングを計り、走り出す。バトンが手に置かれたのでそれを握り、トップスピードまで上げる。
(前の子は射程圏内、絶対追いつく!)
しかしらそちらも陸上部、なかなか追いつけないままアンカーに繋ぐことになりそうだった。
(くそ、あと少しなのに…っ)
「佐和ーーーーー!!!!」
よく通る、心地の良い声が呼ぶ。
手を上げ、居場所を示していた。
「そのまま来いよォ!!!」
仙道はスタートを切る。
(わ、足はえーよバカ!)
バトンゾーンを出ちゃう、そう思った瞬間声が出る。
「頼む!!!!」
ギリギリでバトンを渡し、佐和はそのままトラック内に倒れ込む。息を整えながらレースの行方を追った。
バトンを渡した瞬間、小さく聞こえた「オッケー」の声。その頼もしさにホッとしてしまっていた。
(バスケの時みたいな、目…。)
その鋭く厳しい視線は前方の走者を捉え、みるみるうちに距離を詰めると、そのまま抜き去った。
佐和は立ち上がり、砂を払うこともせずゴールラインへ走る。ラストスパートを掛ける仙道を見つめた。
そして、知らず口を開く。
「彰ーーーー!!!!」
仙道はそれに気付き、不敵に笑うとそのままゴールテープを切った。仙道がメンバーのいる方に振り返ると、まず佐和が軽快にジャンプし、飛びついた。
「すっげーな仙道!速かった!」
首に手を回して抱きついてくるのを仙道は驚きながらも支え、「高辻が追い付いてくれたからだよ」と笑った。
肩に手を置き、尚も、すごいすごい!とはしゃぐ佐和に、仙道も満更ではない。
他のメンバーがやってくると佐和は仙道から飛び降り、ハイタッチする。「チームワーク抜群!」と喜んでいた。
「アンタも大変ね。」
控え席で美代が仙道に小さく声を掛けた。
「なに?日下部。」
「あんなことされちゃたまんないでしょ。」
美代はニヤニヤしながら仙道を見た。
「はは、そんなことないよ。高辻らしくていいじゃん。」
「別に佐和のことだなんて言ってないけど。」
ぴた、と仙道がタオルを取る手を止め、美代の方を見る。美代は溜息をつくと
「相当余裕ないね。」
と笑った。
「まいったな。」
困ったように笑った仙道は佐和の方を見て息を吐き出す。
「無自覚なのが怖いよ。」
美代は、本当にねぇ、と笑うと仙道の背中をぽん、と叩き
「あんたたちお似合いなんだから、上手くいって欲しいんだけどね。」
と言って佐和の方へ歩いて行った。
(女の子って鋭いなぁ。)