*【南】venez m'aider
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俺は何とも思わん奴の世話を焼いたりせん。
『調子はどうや。』
短いメッセージに、千聡は深呼吸した。
(かなりしんどいです。)
指先はそのままメッセージを送信していた。するとすぐに電話がかかってきた。もちろん相手は南だ。千聡は縋る思いで助けを求めた。
「ヤクザ医師の君の力を貸して欲しい。」
「なに物騒な事言ってんねん、薬剤師じゃボケ。あと、国試受けてへんからまだ薬剤師やあらへん。」
千聡は自らの症状を南に伝える。医者からは風邪と診断され、熱が38℃超えの高熱だったので解熱剤だけもらっていた。調剤をしたのは南だったので、承知はしていたが、
「風邪で済めばええけどな。」
脅すようににやりと笑う。千聡は顔を青くした。
「冗談や。元気出せ。」
(言うことめちゃくちゃだよ。)
「アホか、熱高いなら風呂はやめとけ。スポーツやるのと同じやぞ、ンな状態でわざわざ抵抗力落とすな。」
「それは昔の人の話でしょ…?」
「38℃超えは入るな、言うてんねん。」
南はそう言うと千聡の額を弾く。そしてレジ袋を漁って冷却ジェルシートや食べられそうなものなどを取り出す。
「とにかく寝るのが一番の薬や、寝ろ。」
「乱暴やな……。」
「寝るのに乱暴もなにもあるか。風邪は休むしかないんや。」
「…ハイ。」
なんとなく不服そうな返事に、南は一つ息をつく。
「食欲は。食えるもの食いたいものあったら言うてみ。」
「ゼリーみたいなの食べたい。」
「ほなこれな。今食うか。」
「くう。」
その後も、南が尋ねることに 千聡が答え、南は悉くそれに応える。その甲斐甲斐しさに千聡は思わず笑みをこぼした。
「なんか…南くん、慣れてる。」
「そうか?」
南がそれ以上何も言わないので千聡もそれ以上何も聞かなかった。
「ありがと。来てもらえて助かった。」
「別に。気にすることない。」
「ねえ。」
「なんや。」
「…私、南くんのこと好き。」
千聡は南のシャツの袖をつまんで呟いた。南はその手を一度握るも、退けさせる。
「…おおきに。でも熱に浮かされてるせいやと思うで。考え直しや。」
「そんなことないって…!」
「えーから、もう寝ぇ。」
ぐ、と肩を押され、千聡はベッドに無理やり寝かされる。南はため息をつくと、頭をぽんぽん、と撫でる。
「…いつでも連絡し。」
「南く」
「あのな本山、俺はちゃんとしたいねん。」
「…お前の熱下がったら、ちゃんと言うから。それまで我慢せえ。ちゃんとした頭でよーく考えて判断するんや。わかったな。」
そう言うと、片手を上げて部屋を出て、鍵をかけると新聞受けに鍵を入れた。
(それってつまり…。)
千聡は、遠ざかる足音をいつまでも聞いていた。