*【南】venez m'aider
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岸本にしては、気が利いとった。
残念ながら俺はまだ学生で、正社員でもなければ、就職先が決まっているわけでもない。今年は授業はほぼないが実務実習やら卒業研究だので、なんや忙しい。
『南忙しいんか。』
「ぼちぼちやな。」
『飲みに行かへん?』
「お前とサシか、断る。」
『アホ、ちゃうわ。大学のダチと飲むんやけど、向こう女2人で男俺1人やねん。せやからお前も来い。』
「来いてなんや。…しゃーないな。」
『おー、よろしくな。場所は後で送るから。』
行ってみたらなんてことない、土屋もおって、俺は来た意味あるんか?と首を傾げたくなる。
「岸本にしては気の利く誘いやな〜。」
「土屋、お前は帰れ。」
「ええー!そんな悲しいこと言わんといて。僕楽しみやったんやから。」
2人のやりとりに、溜息をつく。少し遠くを見遣ると、女が2人歩いてくる。こちらに気づくと手を振ってきた。あれか?
「待たせてごめんね。」
「女は男待たせるくらいが丁度ええんやで。」
「これ土屋。で、こっちのこいつが南や。」
「よろしくね〜。芽衣でーす。こっちが千聡でーす。」
「なんや、もう酔っとるんか高橋。」
「失礼じゃ、岸本。」
高橋の隣の女が困ったように笑っていた。ふと目が合う。すると、にこりと笑い掛けてくる。
「初めまして、本山です。」
心地よい音楽のような声が、歌うように名乗る。…なんや、これ。
「なー、立ち話もなんやし店入ろうや。僕お腹空いたわ。」
「せやな。」
土屋と岸本の声に我に返る。行くで、と岸本が2人に声を掛ける。俺はもう一度高橋と本山を振り返った。思いの外至近距離におった本山とぶつかる。
「いたた…。ごめんなさい。」
「お、う。悪い、大丈夫か。先入り。」
入口の暖簾を上げて顎をしゃくる。
「南くん優しい!岸本見ならいや。ありがと〜お先っ!千聡、行こ。」
「ああ、うん。ありがと、南くん。」
そう言って2人は岸本らの後を追って歩いて行った。俺は入口の戸を閉め、なんとなく鎖骨の辺りをかく。
…なんやねん、調子狂うわ。こんな中坊みたいなことあるか?ないない、気のせいや。
かぶりを振ると、見失わないように歩き出した。