*【南】venez m'aider
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メーデー、メーデー、この声は届きますか。
6月になった。東京で行われた医歯薬学生大会では準優勝という成績を納め、大阪へ戻る。思わぬ再会があり、収穫は大きかった。
『え、これから?』
「時間あるか?顔が見たい。」
『…そんなこと言われたら断れないな。私も会いたい。』
「ついでに飲みに付き合うてや。シルバーコレクターはすっきりせんわ。」
『いいよ、奢ろ。』
「それはええわ、付き合わせるんやし。」
『勝者の余裕じゃ。』
「…交流戦調子ええもんな、今季は。」
『ところで南くん自身は調子どうだった?』
「あー…。得点王もろたで。絶好調やった。」
『わ、すごい!なにかお祝いしたいなー!』
「はは、期待しとるわ。」
そのやり取りに、つい口元が緩む。
『ここでお知らせがあります。』
「なんや。」
『月曜休暇です。』
「…つまり?」
『今夜と明日、泊まってもいい?』
思わず吹き出すと、電話の向こうで千聡はしどろもどろになる。
『べ、別に忙しいんなら無理にとは言わんけど、せめて今夜は』
「アホ、いくらでもおったらええわ。」
「なんなら一緒に住むか。」
携帯を落とした音がして、声を出して笑ってしまう。慌てて拾い上げて何か抗議している。それらを適当に流す。
「じゃあ、迎えに行くから支度できたらまた連絡しい。」
『うん。じゃあまた後で。』
「おう。」
あちらが切ったのを確認してこちらも切る。部屋を掃除しつつ洗濯機を回す。梅雨の中休み、これを逃すと遠征分の洗濯物が乾かない。それは、困る。やがて電話が折り返し掛かってくる。いくつかやりとりをすると、車のキーを掴んで部屋を出た。
千聡を乗せてスーパーに寄り、買い物をしながら千聡を見下ろす。何を買おうか、お酒は何にしようかなどと笑うその表情にこちらも笑顔になる。
赦されたいとは思ってへん。
でも心のどこかで、
救われたいと願ったのかもしれない。
知らんうちに出しとった信号に、千聡は気付いて、受け容れてくれた。
「烈くん、憑物が落ちたみたいな、なんかすっきりした顔してるね?」
「せやろか…や、そうかもな。」
「なに、なにがあったの?」
「急かすなや。」
「帰ったらゆっくり話す。」
祈るような、救難信号。
気付いてくれてありがとな。
venez m'aider!
これからも、ずっと俺のそばにおってくれ。お前の救難信号にも気付きたいから。
fin.
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2019.11.25〜2019.12.8