*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校卒業編)
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「長身美人がいるんだよ。」
先輩の何気ない一言がなんとなく引っかかった。
部活が終わり、ロッカーで着替えてる時に2年の先輩が話しているのが聞こえた。
「俺、去年必修単位落としてさ、いま授業受けさせてもらってんだけど、気になる子がいるんだよな。」
すると、藤真さんの方を見る。
「そうそう、藤真くらいの身長で、こんな感じに髪の色素も薄くて。仙道、お前も同じ授業受けてんじゃん、知ってる?」
あ、ピンときた。
「それ、仙道の彼女じゃね?」
藤真さんが反応した。
「は?マジで?」
「あー…多分そうです。」
「マジかー。口説いていい?」
「勘弁して下さいよ。」
笑って誤魔化したが、心中穏やかではない。
笑えねー。ほんっと笑えねー。
佐和は髪が伸びた。今までベリーショートだったのを、高3の冬くらいから伸ばし始めていた。本人曰く、成人式のために伸ばしている、だそうだ。
そしたらさ、今までとはまた違った可愛さが出て来てさ。素材がいいから似合うんだよな。
「佐和、結構噂になってんだよ。あの身長だからやっぱ目立つし。」
藤真さんは眉をひそめて耳打ちして来た。
「なんでですかねー。」
「普通に美人だろ。」
そうなんだよなぁ。なんで皆今まで気がつかなかったんだ?身長ってそんなに重要?高校生なんてそんなもん?
「噂をすれば。」
藤真さんが指差す方を見ると、剣道部も練習が終わって帰るところのようで、何人かが重い足取りで門の方へ向かっていた。その中で頭ひとつ出ているのは間違いなく佐和だ。
「おーい、佐和ー!」
藤真さんは躊躇うことなくその名を呼んだ。その集団が振り返り、こちらに気付いた佐和はいくつか言葉を交わして、こちらに駆け寄ってくる。
「お疲れ様です!」
「おう、おつかれ。」
「おつかれ佐和。」
俺と藤真さんを交互に見て、微笑む。
「練習、早く終わったんですか?」
「そーそ、今日はたまたま。剣道部はこんなもんなのか?」
「今週は。スペースの都合で二部制なんです。」
あれ、なんかやっぱり、雰囲気が違う。
「彰?」
こちらを見上げるその瞳に、違和感があった。
なんだ、これ。
「佐和、髪伸びたなー。すっかり女子じゃん。」
「元々女子ですよ。あの、私これからバイトなんで失礼します。」
時間としては19時半を過ぎたところ。バイト、て。いつ休んでるの。
「待って、送るよ。」
「良いって、駅前だし。」
「送る。」
藤真さんがこちらを見た気がする。
俺はそれに気付かない振りをした。
佐和の手を取って、藤真さんに挨拶をすると、さっさと歩き出す。
「……余裕なさ過ぎ。」
藤真さんが何か言ったような気がしたけど、聞こえなかった。
「何時まで?」
「12時…。」
「遅いよ、迎えに来る。」
「大丈夫だって、ゆっくり休んで。送ってくれてありがとう。」
「佐和。」
店に入ろうする佐和の腕を掴む。そうしないと、そのまま行ってしまうから。
「迎えに、来させて。」
それだけ告げて、俺は家路についた。
今までにない焦り。どうしたんだ、俺。