*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校卒業編)
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「はあ、分かりました。」
翌日は部活もバイトも休みで、いつもよりのんびり夜の時間を過ごしていた佐和の元に一本の電話。彼女は呆れて笑ってしまった。
「なにやってんだよ。」
「不可抗力ですよ…。」
部の奴が別キャンパスの部活の奴と飲むから来いって言われて来たものの。聞いてねーぞ、ラクロス女子が相手なんて。仙道が車出すっつうから便乗して来たのに、こいつ飲まされてるし。
馬鹿だ、本当に馬鹿だ。用心しろよ、お前モテんだぞ。俺と同じで。
酔っ払ってんのか知らねーが女子はベタベタしてくるし。あーもーめんどくせー!
「ちょっと出てくるわ。」
「え、俺も…」
「お前はいい。精々女の子の相手でもしてろ。」
お前にその気がないのは知ってるよ。佐和しか眼中にねーもんな。
「ごめんなお姉さん。配車したお兄さんが絶対お金を受け取るなって。」
「ええ?でも…」
「すみません、お待たせして。」
運転席の窓からドライバーに声を掛ける。対角のドアを開けてもらい、乗り込むと会計を済ませる。
「悪いな、遅くに。」
「いえ、てゆーか、お金出しますから。」
「うるさい。あ、ありがとうございました。ほら行くぞ。」
困惑する佐和の手を引き、タクシーから降りる。
「こんな時間に本当に悪いと思ってる。今度それなりに礼をするから今日は許せ。」
「別にそんなことはいいですけど。」
話しながら店内に戻ると、個室の扉を開ける。
「わりーな、いま代行来たから。」
「なんだよ、藤真帰んのかよ、もう一軒いこーぜ。」
「バーカ、暇じゃねーの。」
アホの同期に声を掛けながら仙道の方を見遣る。ラクロス部の奴がやたらとボディタッチしてくるのをやんわりと避けているようだった。俺は溜息をつくと、佐和を中に入れる。
「あれー?藤真、俺の愛しい人連れて来てくれたの!?」
バーカ、お前はすっこんでろよ。仙道は最高に笑顔ひきつってんな、こりゃ貴重だ。
「お、つかれさまです…。」
佐和もいいリアクションだ。うんうん、呼んだ甲斐ある。
「はは、いい表情だな仙道。…おいおい、呆けてんなよマイシスター。」
「…やめて下さいよ、これ以上兄が増えるのは勘弁です。」
佐和は苦笑いをしてこちらを軽く見上げる。俺はその肩を抱き寄せた。
「仙道キー寄越せ、帰るぞ。」
仙道は一瞬眉根に力をいれたが、すぐに周りの人間に挨拶をして立ち上がる。それを見て俺も佐和から手を離した。仙道はポケットに手を入れると車のキーを佐和に渡す。
「ごめんな。」
「別に…。」
佐和の手にキーを乗せると、そのまま抱き寄せた。おいおい、なにやってんだ。
「ちょっと!」
「先輩、佐和は俺の彼女です。絶対に手を出さないで下さい。」
「お、おう…。」
なに怯んでんだよ。普段穏やかな奴程キレるとこえーのは分かるけど、そんな怯むほど凄んじゃいねーだろ。
「…離してくれる?」
不機嫌な佐和は仙道を見上げつつこちらに助けを求める視線を送ってくる。あー、はいはい、わかったよ。
「仙道、そういうのは後にして、取り敢えず帰るぞー。」
「…はい。」
すっげえ不服そう。こいつ佐和絡むと面白えな。佐和は丁寧に挨拶してる。馬鹿丁寧な奴だなほんと。
佐和は仙道の車に乗り込むと慣れた手つきでエンジンを掛ける。
「藤真さんのお宅どこですか?」
「ナビに入ってる。」
助手席に座った仙道が操作をする。俺は後部座席から画面を覗き込む。
「佐和って運転慣れてんの?」
「それなりですよ。」
「俺よりは修羅場くぐってるかも。」
「はあ?」
仙道がくつくつと笑う。佐和は溜息をつくとサイドブレーキを下ろし、シフトレバーをドライブに入れると、走り出した。うんうん、なかなか安定してるな。