*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校卒業編)
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「無敗の女王も大したことないね。」
「ただのブラコンじゃん。」
そういう陰口が耳に入るようになった。
私は当然2軍スタート。誰とはなくそんなことを言われているのはなんとなくわかっていたし、でも正直どうでも良かった。
そういう奴らほど、口が立つのを知っているから。
「佐和、気にすることないよ。」
同期が耳打ちする。
「気にしてないよ。寧ろ、あの人たち私のこと大好きじゃん、雑誌のインタビューのことよく覚えててくれててさ。」
からからと笑うと、同期は溜息をつく。
「あんた、ハイパーポジティブだったんだね。」
そりゃ負けるわ、とぶつくさ言っていた。彼女とはインターハイの準決勝で当たったのを覚えている。典型的な先鋒向きの、チームに勢いをもたらす選手だ。私は少し苦手なタイプ。小さくてすばしっこくて、面が売りの私に対して小手や胴を狙ってくる。それが戦略ってもんだし、わかってんだけど。
「合い面で負けた時は膝から崩れ落ちそうだった。」
「ふふ、私、陰のMVPじゃない?」
試合で取られた何本かの内の唯一の面がそれだったのは一生残る傷かもしれない。
「佐和、高校の時より傷が増えてない?」
彰はそう言って私の太腿のみみず腫れを指差した。
「そうかな、気が付かなかっただけじゃない?」
「んなこたねーよ、俺、隅々までチェックしてるもん。」
「バーカ。」
彰は笑いながらそう言って、すぐに真顔になると膝を指差す。
「こんなとこ、痣作ったことないだろ。」
「転んだんだよ、稽古激しいんだもん。高校なんて比べ物になんない。」
それより、
「彰こそ、痣作る事増えてる。」
「圧倒されるよ。自分より大きい人ゴロゴロいるもん。河田さんなんかもうね…そんな中で藤真さんは飄々とやってのけるから、あの人やっぱすげーわ。」
「当たり負けする?」
「するする、悔しいなぁ。」
そう言って眉を下げる。
「でも、今は佐和の話だからな。」
その双眸からは逃げられないのをよく知ってる。
「やっかみとか。」
「あるけど大丈夫…そんなん気にしてない。眼中にねーもん。」
「佐和のそういうとこ好きだなー。」
「そりゃどーも。彰こそ、そういうのないの?」
「ねーよ、俺は。多分。」
「ああ…。」
気が付かないだけね。
「俺はなんもしてやれねーけど、絶対佐和の味方だから。」
「うん、知ってる。彰が居れば」
「相当大丈夫、かい?」
返事の代わりに、首に手を回して口付けた。
「りょーかい、佐和の好きにやったらいいよ。」
「ありがと。彰大好き。」
「お、今日はやけにサービス良いな。」
彰がそう言いながら笑っていなかったことを、私は知らなかった。