*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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「卒業だねぇ。」
「卒業だなぁ。」
佐和と仙道は1番後ろの席から教室を見渡した。
「この教室ともさよならだね。」
「先生ともな。」
「美代も越野もまた遊ぼうね。植草や吉兆も。」
「えー。美代ちゃんは良いけど男はいらねーよ。」
「またまたぁ。」
2人で笑っていると、
「おーいわんぱく。俺の話を聞け。」
「聞いてますよー。」
担任の言葉に2人は声を揃えて返す。
「サンキューユニゾン。校長の話で寝るんじゃねーぞ。」
その言葉に顔を見合わせて笑った。
「保証致しかねます。」
「俺も。」
「バカ、また説教だぞ。」
やれやれ、と溜息をついて担任は話を進める。
前の席に座る越野と美代が振り返った。
「最後までこの調子かよ。」
「まったく、感傷も何もあったもんじゃないわね。」
「あーあ、学年主任が出てくるとはね。起こしてって言ったじゃん。」
「無理だって。俺も眠いもん。」
「仕方ないね。」
「うん。」
渡り廊下から中庭を見る。ハンドボール部が何やら賑やかしく卒業生を送別しているようだった。
「ああいうの、彰はないの?」
「あるよ、体育館行かなきゃ。佐和は?」
「私も。武道場行かなくちゃ。」
そう言いながら中庭の様子を眺めていると、
「見つけた、仙道先輩!」
「高辻先輩こんなところに!」
女子を中心とした下級生が追いかけてくる。
「なんだなんだ。」
「俺これ知ってる、中学の時ボタン取られたんだよ。」
「逃げよ、佐和!」
そう言うや否や、仙道は佐和の手を取り走り出す。
「ちょっと、靴、鞄も!」
「いいって、後で取りにこれば!」
取り敢えず撒こう、と上履きのまま昇降口から外へ出る。
「っはは、あははは!」
「なんだよ佐和、急に笑い出して!」
「おかし過ぎだろ、なんで逃げてんの私たち!」
「さーな、もうわけわかんねーよ!」
そう言って仙道もつられて笑い出した。
色んなところを逃げ回り、最終的には教室に辿り着いた。2人は息を切らしながら荷物をまとめる。
「……はー、疲れた!」
「荷物持ったらさっさとずらかろうぜ。」
「悪いことしてるみたい。」
「…そうかも。」
そう言って仙道は佐和の手を引いて抱き締める。
「……記念に、ここでしちゃう、とか。」
耳元で囁き、ぺろ、と舐める。
「…んっ、何言ってんだ!」
「冗談だよ、じょーだん。」
「冗談に聞こえなかった。」
「…半分本気だった。」
そう言って、仙道はやや乱暴に口付ける。
角度を変え、何度も。
「ん、やだ、やめて…!」
「それ、もっと、に聞こえる。」
「…やめろっつってんだろ!!」
「おお、それそれ。」
仙道は笑いながら佐和の平手打ちを手で受け止めた。
佐和は頬を真っ赤に染めて息を整える。
「こんな顔じゃみんなのところに行けないよ。」
「あはは、ごめんごめん。」
仙道は笑いながら、今度は優しく口付ける。
「帰ってから、な。」
その言葉に佐和は抗議の視線を向けたが、仙道はそれを受け流し、微笑んだ。
「ここから始まったんだな。」
「うん。」
「これからもよろしくな、佐和。」
「こちらこそ。よろしくね、彰。」
鞄を持つと、静かな教室を後にした。
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2019.11.11
ハッピーエンドの欠片 高校編
fin.