*【仙道】ハッピーエンドの欠片(高校編)
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「はー…小さいね。」
腕の中で目を閉じ、時折もぞもぞと動く小さな命に、ただただ感動していた。
「彰くんも抱っこしてみたら?」
由佳が笑いながら佐和の腕の中の赤ん坊を指差す。
「や、俺は、」
「折角だからさ抱かせてもらいなよ。ほら、座って。」
佐和は躊躇う仙道を座らせ、レクチャーをしながらその腕に乗せる。
「ちっせー…かるー…。」
「あっはは、彰めっちゃかたい。」
「ったりまえだろ、インターハイや入試より緊張するっての。」
そんなやりとりをする2人を見た由衣の、彰くんと佐和ちゃんの赤ちゃんみたい、という呟きに、佐和は赤面してさっさと赤ん坊をベッドに寝かした。それを見て今度は仙道が笑った。
「彰ー!バスケおしえろよー!」
「彰くんのバスケ見たーい!」
そうせがむ双子を連れて、仙道と佐和は公園にやってくる。
「大人用のゴールは高くない?」
「ミニバス用のゴールがあっちにあるよ。」
「ボールは?」
「ありまーす。」
年季の入った一回り小さなボールを取り出した仙道に、佐和は目を丸くする。
「それ…。はは、物持ちいいね。」
「取っておいて正解だったな。…使えるのかこれ。」
仙道はボールを両手で軽く押し、大丈夫そうだ、と笑った。
「由樹、パス。」
仙道はボールを由樹に向かって投げた。
拙いながらも、由樹は仙道のレクチャーを受けながら楽しそうに遊んでいた。
それを眺めていた由衣が佐和を呼んでベンチに座る。
「ねー佐和ちゃん、私困ってることがあるの。」
「なに?由衣。」
「彰くんと佐和ちゃん以上にときめく男子がいないの。」
「…ほう。」
(最近の小1って、こんな感じ?)
(…ん?私も男子?)
2人を送ると、仙道と佐和は手を繋ぎ、仙道の実家に向かう。
「ごめんな、母さんが無理言って。」
「こちらこそ。結局3日までお世話になることになって申し訳ないな。」
「…良かった、佐和が彼女で。」
「は?」
「なんか実感したの。俺、見る目あったなー。」
「私もだよ。」
そう言って微笑み合う。
「彰の、ねえ、彰の?」
(どっかで聞いたな、これ…。)
仙道姉の第一声に、佐和は笑いを堪える。仙道はにこにこと笑いながら、彼女の佐和だよ、と紹介した。
「初詣?じゃー明治神宮行ってきてよ。ヤクルトの優勝祈願してきて〜。」
「あはは、お断りだよ。」
仙道の姉夫婦がやって来て暫く談笑していたが、仙道が初詣に行こうと佐和を誘って席を立とうとする。そこへ姉が笑いながら冗談とも本音ともつかないことを言うので、仙道は笑って一蹴した。
「あんな混むとこ、もうごめんだな。」
「わかる〜私も流石に行かない。あ、ね、佐和ちゃん、少しお顔いじらせて〜こんないい素材なかなかないじゃない。」
そう言って立ち上がると佐和の隣に立ち、顔を覗き込む。
「わ。」
「ん〜、千尋さんの妹だけあるね〜こりゃいい、初詣前にお姉さんがもーっと可愛くしてあげよう〜。」
佐和を立たせると、部屋に連れて行ってしまった。流れるような一連のやりとりに仙道は目を瞬かせる。
「ごめんな彰くん。」
「や…いいんですけど、佐和が…。」
義兄に苦笑いをし、部屋の方に目を遣った。
「成人式まで髪伸ばしたら?」
「え。」
「伸ばしたことない?折角だから伸ばしてみなよ。絶対似合うと思うなぁ。」
目線だけこのあたり見て、と鏡の上の方を指差され、佐和はその通りにする。
「えと…。」
「瞬き我慢してね、ごめんね。」
「あ、はい。」
「長かったら纏めちゃえばいいし、短いのより楽かもよ。あ、でもドライヤー面倒臭いかな。」
はい完成。と前髪を留めていたクリップを外される。
「少しカットしてもいい?」
「いいんですか?そろそろ切りたいと思ってて。」
「やったー。じゃ、伸ばす方向でカットしよっかな。」
「あ…はい。」
「彰〜ゴミ袋と掃除機とフローリングワイパー持ってきて〜」
「はいはい。」
しばらくして声がかかり、仙道は言われた通りのものを持っていく。
「入るよ。」
「どーぞ。」
仙道は床に敷き詰められた新聞をまとめながら佐和の後ろ姿を見上げる。
「どしたの佐和。こっち向いてよ。」
新聞を粗方ゴミ袋に入れると、立ち上がり、肩を軽く叩く。
「あはは、何照れてるの?お姉さんの腕が良すぎたかなぁ?」
仙道姉は佐和の顔を覗き込んで笑った。
「うん、可愛い可愛い。」
そう言って道具をまとめると掃除機をかけ始める。
「佐和?」
仙道は正面に回り、息を飲んだ。
「あきら…。」
「あー。姉ちゃんいなかったらこのままちゅーだ。」
目を手で覆い、天井を仰ぐ。
「やめてよ、折角のリップが台無し。あんたも夜カットするからね。」
「えー俺も?」
「それいつ切りに行ったの。」
「入試前?」
「その長さで2ヶ月はちょっとなぁ。」
「セットしにくくなって来た。」
「ほら、切ろーよ。」
「ん、じゃあお願い。」
(仲良いなぁ。)
佐和は2人を横目に、フローリングワイパーで床を掃除し始めた。
2人が近所の神社でお参りをして帰ると、リップの剥げた佐和を見て、堪え性のない弟だわ、と仙道姉は笑った。
(本当に堪え性のない男だよ。)
(えー?堪えてるよ。夜這いしたいの我慢してる。)
(実家来てよかった!)