大阪
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どいつもこいつも、
あいつもそいつも。
「南、お前いつからボールペンの行商始めたん。」
そう、ほんとそれ。
「金とってええんやったらボロ儲けや。」
薬局という商売柄、いろんな取引先からノベルティもらうんやって。大半ボールペン。烈にボールペン借りた奴は漏れなくそのままもらっとる。ナントカ商会やら、ナントカ製薬だのとプリントされたそれ。やれやれ全くコレナンデ商会。
クラスメイトとそんな話をしてる恋人を横目で見遣り、小さく溜息をついた。
「まだ書いとんか。」
日直だった私は、放課後誰もおらんようになった教室に残ってのんびり学級日誌を書いていた。烈は私の前の席に座って椅子の向きは前のまま、体をこちらに向けて座った。背もたれに頬杖をついてこちらを見下ろす。
「しゃーないやん、相方休んどるし。」
「井上か。あいつインフルエンザやってな。」
「この時期にねぇ。」
烈の方を見ることなく日誌にペンを走らせる。
「依紗。何不機嫌なっとんねや。」
「どこがや。上機嫌やで。」
「嘘が下手やな。」
「…別に。」
ボールペンひとつにいちいち嫉妬してアホみたいやろ。かく言う私の手には、烈がくれたボールペン。
「…依紗だけやで。」
「はぁ?」
「それ。ネコの。」
「これ?」
耳にリボンこさえた無表情のネコのマスコットが付いたボールペン。ノベルティにしては結構凝ってる。
「それ、レアやで。オカンの目を盗んで持ってきてん。」
「うそ、やめてよ。」
「お前それ好き言うてたから。」
手を止めて、顔を上げる。烈は不敵な笑みを浮かべていた。
「やっとこっち見たやん。」
「う、るさいな。」
慌てて書くのを再開する。最後まで書き終えて日誌を閉じ、ボールペンをペンケースにしまう。
「依紗には、これ。ご贔屓のタクシーの運ちゃんがくれた。」
机に置かれた紙。
「…ラブホの割引券やんけ。」
「間違えた。これは岸本にやるやつ。」
おい。彼女にそんなもん見せんなや。それから岸本にそんなもんやるな、彼女おらんのやぞ、なんの嫌がらせや、可哀想やろ、やめたれよ。
てゆうか、運ちゃん、何渡してんねん。
「こっち。週末な。」
「映画…?」
映画のペアチケットやった。…タクシーの運ちゃん、粋やん。
でもな、烈。
「私、絶賛月のもん真っ最中やで。」
「……………別にそんなもん関係ないわ。」
うそつき。
なんやねん、その間。
エースで4番の愛情表現
(やきもちなんてうざいやろ。)
(好いた女になら本望や。)