大阪
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さっきまで晴天だった。眩しくて、暑くて。学校の外周を走っている間のアスファルトの照り返しにうんざりしていたのに。
「こんなん聞いてへん…。」
「せやなぁ。」
すっかり廃れた商店街、シャッターのおりた店の軒下で雨宿りをしていた。アスファルトを叩く雨の音と跳ね返りにうんざりした。うんざりしてばっかりでいやになる。ああうんざり。あれ?何回目?
雷も鳴ってるし、いいかげんにしてほしい。そして隣に、土屋。呼んでもないのにバスケ部の主将が一緒に居る。どこから湧いたん。
「なんでおんの?」
「君の背中が見えたから?」
「ああ、そう…。」
にこにこと笑顔を貼り付けて首をかしげる土屋のなんとあざといことよ。
「今日もよお走ってたなぁ。」
「そりゃ…。」
「でも短距離選手やろ。使う筋肉ちゃうんちゃう?」
「ちゃうちゃうちゃうんちゃう?」
「お、なになに。おちょくられとるん?僕。」
そんなつもりはないんだけど。土屋と話す時は少し緊張してしまって参る。物事を説明する時はなおさらだ。私の話なんかつまらないんじゃないかとか、こんな話してもおもんないんやないかとか。だって別に筋肉の話なんか聞きたないやろ、大腿四頭筋とかヘモグロビンとか血中酸素濃度とか…。
「そんなずぶ濡れじゃ風邪ひくで。」
そんな私の葛藤をよそに、土屋は使ってないタオルをこちらによこした。府内の人間なら赤ん坊でもわかるタテジマ、虎。土屋、野球好きなん?知らんかったわ。
「いや、ええわ。私もタオル持っとるし。」
そう言って目の前に牛モチーフのマスコットがついたタオルを広げてやる。残念でした、私はイチローの古巣派です。
そんなことをやりとりしているうちに雷の音が遠ざかっていくようだった。タオルを肩にかけ、折りたたみ傘をひろげる。
「君のそういうしっかりしてるところ、好きやなぁ。」
くすくすと笑う声に見上げれば、取り繕ったところのない困ったような笑顔と、雲間の青空。
やばい、私もしかして、
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