大阪
名前変換
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時間は確実に流れていた。
「なあ。」
商品の棚を眺めていたが、名前を呼ばれて振り返る。幼馴染みの烈はカウンターに頬杖をついてこちらを眺めていた。
「俺、今日誕生日なんやけど。」
「知ってるけど。」
「なんかないんか。」
「どあつかましいな。」
あはは、と珍しく声をあげて笑う姿に目を瞠る。機嫌がいいな、すこし気持ちが悪いぞ。
「俺、依紗ちゃんが欲しいなぁ。」
「じゃああと2年頑張んな。卒業して薬剤師さんになったら考えたるで。」
「ほんまに?せやったら、約束しよや。」
手招きするその仕草にあからさまに溜息をひとつついてやると、首をかきながらそちらへ向かう。招かれるまま近付けば、唐突に重なる唇。
「…嫁にもらいにいくで。」
三段飛ばしの告白に思わず面食らう。別にキスなんて初めてじゃない、強いて言えばつい最近彼氏にふられたばっかり。そのせいだ、そのせいなんだ。
心臓がはやいのは、そのせいだ。
「もらってくれてもええけどな、はよしてくれんと。時間は止まらへんからな。」
烈より2年早く生まれてしまったから、私はいつだって彼の前を歩いている。隣を歩くことなんてないとおもってた。信じていいのか、その言葉を。そんな事をぐるぐると考えていると大きな両手が私の顔の前でひとつ鳴る。
「2年頑張ったらええんやろ、すぐやわ。依紗ちゃんと俺の差なんて、そんなもんや。」
なんどか目を瞬かせていると、口角を上げた烈が私の肩に手を置いた。私は思わず彼の口を手でふさぐ。
「なにすんねん。」
「二度はない。」
「ええやん…子供やないんやぞ。」
くぐもった声がおかしそうに響く。手にあたる熱い息がくすぐったい。骨張った手が私の手を退けると耳元に唇を寄せた。
「ちゃんと覚えとけよ依紗、2年後や。」
私にだけ届く声で、低く、ささやいた。体を硬直させていると、烈はもう一度私の顔を覗き込む。弟のような幼馴染みはすっかり大人になって、男になって、その双眸で私を射抜く。
Time goes by
大人になった。きみも、わたしも。
その証拠にほら、重なったくちびるが熱い。