大阪
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昔、2人で歩いた帰り道。
そうだ、この角を曲がった先には。
「依紗。」
口を塞がれていた手がいつの間にか指に絡められていた。昔を懐かしんでいた依紗はそのことにようやく気付く。
急に早くなる鼓動に気付き、自身の胸に手をやった。私だって子供じゃない。一応、今日という日は成人式で大人の一員になった日で。ってそんなことはどうでもいいんだ。そうじゃない。
この気持ち、なんだっけ。なんて首を傾げる幼さはとうになくした。昔の恋人がこうしてここまで連れてきた理由を察することだってできる。
「烈、なんなの。」
寂しい街灯に照らされた公園はなにも変わらない。中学生だった時分、帰り道にここに寄っては他愛のない話をして、日が落ちる頃に手を振った。
そんな大切な場所に連れて来た理由を、問い質してやりたい。
(言葉にしてよ。…お願いだから。)
南は振り返ると、立ちはだかるように向き合う。最後に向かい合った時より一段と背が伸びていて、依紗は時間の経過を実感した。
「依紗、お前飲み過ぎやねん。」
「……ちょっと待て、言うことはそれかい。」
待てコラおまえこの期に及んで。
そう言おうとした筈だった。
南が、口を塞がなければ。
「…酒臭い女とキスなんてしたないんじゃ。」
「お、お、おま…っ」
そんなことを言いながら、何度もキスを交わす。あの頃とは全然違う、その熱も、性急さも。依紗の耳の後ろに手を入れてしっかりと固定する。抵抗しても、その力には敵わなかった。
「烈、ちょっと…っ」
「…好きや。」
「は、え…」
至近距離で見つめられて依紗は瞠目した。どういう展開が待っているのかと予想していたし、きっとその言葉をくれるんだと期待していたのは確かだったけど、その目があまりに真摯で驚かずにはいられない。
「……あの時は、悪かった。」
「ちゃうやん、私がわがまま言った…。」
「俺は自分のことしか考えてへんかった。」
「私だって自分のことばっか」
喉の奥から迫り上がる嗚咽を、依紗は手の甲を口に押し当てて我慢しようとした。それを南の手が退ける。
「泣いたらええやん。」
「なんで泣くねんっ…」
ぼろぼろと溢れる涙に南が口付ける。
「なんでもっと早く言ってくれへんねや。」
「会われへんかったからしゃーないやろ。」
「文明の利器があるやろ。」
「電話って言えや。おっさんかお前。」
「うら若き乙女つかまえておっさんてなんやねん…!」
折角の涙が台無しやんけ!依紗が抗議すると南が、ふ、と笑う。
「…ええな、これ。」
嬉しそうなその表情に依紗は驚く。そしてつられて笑った。
「うん、すごくいい、…いいね。」
すると南がもう一度口付ける。それに依紗も応じた。
「…もう一度、やり直したい。」
「…私も。」
Re: Re:Start
待ってたよ。