大阪
名前変換
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流れていく景色の中で
たった一人、目に留まった。
成人式の後、中学の同窓会が催された。昼間の式典の華やかさから一転、カジュアルな雰囲気での酒宴。
「南ぃ!飲んどるか!」
「うるさ…。」
どこに行っても岸本は一緒で気が滅入る。高校を卒業して漸く縁も切れたかと思ったがそうでもないらしい。酔っ払っとんのかいつも以上に陽気で声がでかい。元からでかいのに更にでかい。
仲のいい奴と喋ったり、写真を撮ったり。各々がそのように楽しんでいるのを見ているとなんとなくその頃に戻ったような、浮かれた気分になる。俺もそこそこ酔っとんな。
「そこの仏頂面ぁ!一緒に撮るで!」
「またうるさいのがきた…。」
徳重は、なんやて?と聞き返してくるがそれは無視。ツレに携帯を渡して、ほら撮んで!とその携帯を指さす。
「お前、飲み過ぎなんちゃう。」
「ああ!?」
「柄悪…。」
噛み付かんばかりの勢いでこちらを向いたところでシャッター音が鳴った。
「ちょお待たんかい!いまのは悪意しかないタイミングやで!」
「ベストショットや。」
「つ…南ぃ!」
呼び間違えそうになってやめたその声に胸が小さく痛んだ。なんやねん、急に。
覚えとけよ、と言い残し、やや頼りない足取りでツレと他の輪に消えていく。その様はあまりにあの頃のままで、ため息をつかずにはいられない。
「二次会行く人ぉ!」
当時の取り纏め役が相も変わらず取り仕切る。面倒臭いし帰るか、と人垣に背を向けたその時、不意に岸本が俺の腕を掴んで顎をしゃくる。
「あいつ。」
さっきの酔っ払いトーンとは打って変わって真剣な声音で短く囁いた。きっしょ、やめえ。視線の先を見遣ると、すっかりへべれけ状態となった徳重が勢い良く手を挙げているところだった。
「まーあかんやろ。飲み過ぎやで。」
「なんで俺に言うねん。」
「…お前くらいしか止められへん。」
「他の奴おるやろ。」
「なんやねん、まだ好きなんかと思ったわ。」
…はあ?
「あいつのこと狙っとる奴おったで。さっき飲んどったら、振袖姿があまりに可愛いくてたまらんかったから口説くとか…飯田やったかな。」
飯田、の辺りで俺は歩き出していた。その飯田があいつに近付いていくのが見えたから。
「おい。」
「あ?みなみやん。みなみも行くん?」
「行かへんわ。お前飲みすぎや、帰るで。」
「はあ〜!?うっさいわボケぇ!」
こいつのツレが、ヨリ戻したんか、とゲラゲラ笑うので、
「そうや。」
と言い切って飯田を睨む。こちらを見上げて何か言おうとした徳重の口を手で塞ぐ。
「お先。」
その場を離れる途中、岸本がこちらを見てにやにやと笑い、手を振っていた。無視して通過したが、今回ばかりは感謝してやってもええな。
「つよし…」
くぐもった声で名前を呼ばれる。湿った吐息が手にかかり、一瞬体が疼いたが理性が踏みとどまらせる。
「もーちょい待っとけ。… 依紗。」
人目のないところまで。
そこまで行ったら、覚悟しろ。
Re:Start
そこの角を曲がったら
もう一度、始めよう。
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Twitterにてリクエスト頂いたものです。
ありがとうございました!