大阪
名前変換
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(いつかはこんなことになるんやろなとは思ってた。)
携帯に表示された名前を見て、南はため息をひとつ。
『だから、あいつはやめとけ言うたやろ。』
受話器の向こうの幼馴染みは、ぶっきらぼうにそう返してきた。
「別に…後悔はしてへんもん。」
依紗は、ず、と鼻をすすりながら強がりを言った。始まりがあれば終わりは来る。そう言い聞かせていないと、このモヤモヤした鬱陶しい気持ちに押しつぶされそうでやってられない気分だった。
『まあ、なんやかんや言って紹介したのは俺やから、こういう結果になったんは多少責任感じてんねんで。』
「別にれっちゃんが責任感じることちゃうで。」
『さっきからなに意地になってんねや。』
つうかれっちゃんやめろ、と声色に少し不機嫌さが滲んだ。それを感じて依紗はブランコをこぎながら、少し笑った。
「うちも他に好きな人出来てん。ちょうど良かったわ。振られた方が同情引くやろ。」
『変に前向きやな。なんや、また俺の知り合いか?』
「……せやなぁ。」
依紗はブランコを止めて、少し息を吸い込んで、
「うち、烈が好きや。」
その言葉は受話器に吸い込まれていく。
一瞬、あちらで南が息を飲んだのが分かった。
するとすぐに背後でため息が聞こえて、ブランコのチェーンが揺れた。
「なんでお前が先言うねん。」
依紗が驚いて見上げると、そこには受話器の向こうに居たはずの相手が立っていた。
「なんで…ここにおんねん。」
「お前振られるといつもここやし。」
つうかそんなことどうでもええやろ、と南が呆れたように言うと依紗の正面に回ってしゃがんだ。そして自分の膝に頬杖をついて見上げてくる。
「お前、自分がなに言うたかわかっとんのか。」
「わ、分かっとる。ただ、烈が、」
「俺がなんや。」
そうだ、まさかこんなに早く現れるなんて。
そう言おうとしていたら、そんな間も無く口が塞がれた。
「…!」
触れるだけのキス。息のかかる距離にいる幼馴染み。一瞬のことで依紗が固まっていると、南は小さく笑う。
「俺が先言うはずやったんや。先越されてもうた、みっともな。」
惚れた女に告らせるんは俺の主義に反するんや、と言うと依紗の頭を軽く撫でる。
「俺も依紗が好きや。もう待てへんで、覚悟しいや。」
そう言って立ち上がると、依紗の手を引いて立ち上がらせる。
「いつまでもこんなとこおったら風邪引くで、流石のお前も。」
展開の速さに追いついていけず、目を白黒させるばかりの依紗だったが、我に帰った。
「さ、さすがのお前も、て、なんやの!」
「バカでも風邪引くでってことやろ、皆まで言わすなアホ。」
「そういうこと言うてんちゃうわ!な、な、な、なんやの!もうわけわからん!」
「わからんのか?」
南は少し屈んでもう一度依紗にキスをする。
「好きやで、依紗。」
これでわからんかったらさすがに見込違いのアホや、と笑った南はよく見たら髪が短くなっていた。
「おかっぱやめたん?」
「あれな、俺も正直イマイチやってん。」
依紗はその髪に手を伸ばし、少し乱暴に撫でる。
「ははは、ええやん、似合っとる。カリメロっぽかったもん。」
「……カリメロやめ。」
ふと夏のことを思い出し苦い気持ちになるが、依紗の手をのけながら微笑む。
「受験生やしな、気持ちも変えんと。」
「……うわ、忘れてた。進路どうしよ。」
「なんやまだ決めてへんのか、大丈夫なんか依紗。」
「…なんとかなるやろ。なんなら嫁にもらってや。」
南は間髪入れず
「それはそれや。」
と突き放して笑った。
なんだかんだで君がいい
(でも薬科やろ烈。6年も待てるかなー?)
(なんや、既成事実でも作ったろか。)
(アホか!)
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