海南
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ああ、なんてずるい奴なんだ。
購買のメロンパンの袋を、ばり、と開ける。まんまるのそれは欠けることなく甘い香りを漂わせていた。
まるでほんの少し前の私みたい。
何ひとつ欠けることなく、全て円満、満々まんまるの恋人関係。大変甘美な時間を過ごしていたし、これからも続いていくと思ってた。
大きな口を開けて、がぶ、とかぶりつく。
甘い。甘過ぎたんだ。大体、たかが高校生の恋愛じゃないか。どうしてそんなにのめり込んでしまったのだろう。次から次へと流れる涙なんて知らないふり。どんどん欠けていくメロンパン。まんまるのそれは見る影もない。あっという間に食べ終えてしまう。
見たか。こんな現実、全部のみこんでやる。
「いい食べっぷりだなぁ。」
隣に座ったのはバスケ部の神だった。にこにこと笑いながら購買のおにぎりを開け、頬張る。
「徳重、嫌なことでもあった?」
私の顔を見るでもなく、同じ方向をみて問い掛けてきた。気を遣ってんだか遣ってないんだか。
「べつに。」
涙を手の甲で拭って、ふん、と鼻を鳴らす。神はくすくすと笑った。購買のおにぎりなんて貴重品、よく手に入れたな。ソッコーで売り切れる人気者なのに。
「これ、よかったら。」
差し出されたのは、私の好きな銘柄のプリンだった。これも購買の人気者で、なかなか手に入らない。今日みたいな日にこそ食べたい…
…やっぱやだ。あいつを思い出すから。こんな時はいつも買って来てくれるんだ、ダッシュでさ。
「別に徳重のためじゃないんだけど。」
そう言って、こちらを見た。
「つまんない奴のために泣くことないよ。」
その手に持った袋には残りのおにぎりと、同じプリンがもうひとつ入っているのが見える。
ねえ、本当に私のためじゃないの?
「神、プリンもうひとつ見えてる。」
すると、くすくすと笑った。
「見えてるんじゃなくて、見せてるんだよ。」
「…どうしてだと思う?」
口元に湛えた笑みとは裏腹に、瞳には鋭く真っ直ぐな光を宿していた。
そんなの、知ったこっちゃないじゃないか。
教えてよ、ねえ。
プロメテウスの贈り物
私の心に新たな火を点したのは、君。
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