他全国
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あなたをいちばん輝かせるのは、
バスケという魔法。
春休み、寮から帰宅している英治の元を訪れると親戚の女の子と昼寝しているところだった。昼寝……昼前寝?11時を過ぎたくらい。気持ちよさそうに寝息を立てる2人を眺めていたら英治のお母さんが笑う。
「ごめんね依紗ちゃん。遊び疲れちゃったみたい。」
どっちが遊んであげてたんだか分かったもんじゃないな、とか思いながら転がっているうさぎの人形を拾い上げる。すると、ザザザ、という無機質な音とともにうさぎが左右に揺れる。
「それね、声を掛けるとおうむ返ししてくるの。でも調子が悪くて。」
もう1人の女性、多分このちびっこのお母さん、が苦笑した。なるほど確かに挙動がおかしい。滑らかに動いたかと思えば急停止をし、沈黙する。
ややあって英治が目を覚まし、気怠そうに起き上がると私をみて、へら、と笑った。手元の人形を認めると、手を差し出す。
「依紗、それみせて。」
うん、と頷いて渡すと、うさぎのおしりのところを眺める。
「なんてとこみてんのよ。」
「ここに機械が入ってんだよ。」
べり、と面ファスナーをめくると、内臓よろしく機械が出て来る。やめてあげてよ、夢が壊れる。
女の子が目を開けたので、英治は急いでそれを収めた。
「えーじくん、うさちゃん。」
「おう。」
手渡すと女の子は、おはよう、と声を掛ける。うさぎはやっぱり挙動不審で。
「ヤエ、かして。直すから。」
「なおる?」
「なおるよ。キンキューシュジュツだ。」
「きんきゅーしゅじゅ…?」
舌足らずなヤエちゃんの頭をなでて立ち上がると、来いよ、と私の肩を叩いて自室に消えた。慌てて追いかける。
なんだか、いつもよりかっこよく見えるのは気のせいだろうか。
「電池かなー。」
英治は、既に入っていた電池を取り出す。英治の大きな手に比べると内臓は随分小さくて、それをいじくりまわす様はなんともいえない。器用なのか不器用なのか…。
「メス。」
「よくわかんない。」
細いマイナスドライバーを手渡すと、これこれ、と笑いながらカチャカチャと音を立てて更に作業を進めていた。
「ここの接触だな。」
楽しそうに独りごとを言って、ネジを締める。
「意外、わかるんだ。」
「機電関係は相性がいいんだよな。面白いよ。」
「きでん?」
「機械電気。授業でやるんだよ。」
「ふーん。」
電池を新しいものに取り替えると、人形を座らせる。
「おはよう、よく眠れたか?」
「オハヨウ、ヨクネムレタカ?」
左右に揺れながら、いくつかキーの高い声で返す人形にふき出してしまう。英治は怪訝な顔をしてこちらをみた。ごめんってば。
「家族の方、呼んで。」
「はいはい。」
お医者さんごっこは続いてるんだね。
「えーじくんありがとう!」
「どういたしまして。」
部屋にやってきたヤエちゃんは目をきらきらさせながら喜んで、うさちゃんを抱きしめる。小さな体と比べるとうさちゃんはそれなりのサイズだ。小さく見えたのに比較対象が違うと全然印象が変わるなぁ。何より、可愛い。
「おかーさーん!うさちゃんなおったー!」
部屋を飛び出していくのを見送ると、工具を片付ける英治を眺める。
「…なんか。」
「ん?」
こちらを見上げる英治と目が合う。直視できなくて逸らしてしまった。
「…。」
「なんだよ。」
「…かっこわる。」
「はあ!?」
片付け終わった英治は立ち上がるとひとつ息をついた。
「いーよ、なんとでも言ったら。」
口を尖らせて部屋を出て行こうとする。腹減ったな、と呟いたところで居間の鳩時計が正午を告げた。
「今日はエイプリルフールだよ。」
英治は手を頭の後ろで組もうとしていたのをやめて、こちらをみた。
「嘘。かっこいいよ。…悔しいけど、かっこよかった。好きだなって…思ったよ。」
嬉しそうに笑ってドアをしめた。長い足であっという間に距離を詰めて来る。
「勉強しとくもんだな。」
私の顎を軽く持ち上げて、唇を重ねる。なにそのきざなキス。文字通り気障。小癪な笑顔でこっちをみてる。言わなきゃよかった。
「俺も依紗が好き。」
今度はその両手を私の耳の後ろに差し入れて、顔を近付けようとしてくる。悔しいのと恥ずかしいのとで思わず頭突きをしてしまった。
「いってえな!」
「英治のくせに生意気だよ!」
「はぁ〜!?」
エイプリルフールの魔法、解くんじゃなかった。心臓がうるさい。
逆転シンデレラ
オフコートでのあなたを輝かせるのが
私の魔法だといい。
…なんてね。
------------
SDワンライ参加作品