翔陽
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「いーい天気だねぇ…。」
「お前、それどのテンションで言ってんだよ。」
昼休みの屋上で、フェンス越しに校庭を見下ろしながら依紗はぼんやりと呟いた。それに間髪入れず藤真が返すと、チッと舌打ちしながら依紗が藤真を睨む。
「なんであんたがここにいるのよ。」
「なんでだと思う。」
「慰めにきたの?」
「慰められてーのか。」
やだ気持ち悪い。と依紗はまた校庭に目をやる。誰もいない。強いて言えば体育の授業の準備なのか、教員がトンボでグラウンドを整えている。
(油断したら泣きそう。)
順風満帆と思われた恋人との交際はあっけなく終わりを告げ、夏休みどこ行こうとか、どんな映画見ようとか、そんなことを楽しみにしていた気持ちは宙ぶらりんのまま行き場がなくなってしまった。
不意に伸びてきた手が依紗の頭を優しく撫でる。
「泣けば少しはすっきりするんじゃね?」
「何言って…」
堰を切ったように溢れたそれは、止まることなく静かに流れていく。
(ああ、悔しい。どうして私じゃダメなんだろう。)
「俺にしとけば、徳重。」
その言葉に、隣を振り返る。真剣に、だが優しい目でこちらを見る藤真にどきりとする。
「なに…それ…。」
「俺、徳重のことずっと好きなんだけど。」
「なによ…じゃあこの状況はあんたにしてみたら最高におもしろいんじゃないの?」
苛立ったように返せば、藤真は不機嫌そうに更に返してきた。
「おもしろくねーよ。泣くほど好きだって見せつけられて何がおもしれーんだよ。」
そう言って手を引っ込める。
「すぐじゃなくていいから、でも、真剣に考えろよ。俺は本気だ。」
そのまま振り返ることなく屋上を後にした。
依紗は、撫でられていた頭に自分の手をあてがう。確かにそこに熱が残っている。
学校なんて休んじゃえばよかった
(でも、こうなることは時間の問題だったんだ。)(逃げられら見込みは…ない。)