大阪
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きらきら光るイルミネーション。行き交う知らない人。なんて言うのかな、こういうの…あ、宝石箱や。って、あかん、これじゃ食レポの人になる。どちらかというと、オモチャ箱みたい。…って、いい大人が何言うてんねん。
空にきらきらお星様、みんなすやすや眠る頃。気付けば鼻歌をうたっていた。
「依紗はっや、お待たせ!」
「ぎゃあ!」
土屋が後ろから肩を叩く。気配を感じなかったらから必要以上に驚いてしまった。なんやねん…おどかさんといてや…。
「絶対僕の方が早いと思ったのになぁ。」
「残念でした。」
そう言って笑ってやると、土屋はにこにこしながらこちらを指差す。
「今の、おもちゃのなんちゃらやな。」
「き、聞いてたん!?」
「あはは、聞いてた。」
そう言ってこちらに手を差し伸べる。
「手、繋ご。」
カジュアルで気取らないレストランでディナーを済ませる。肩肘張らなくて済む感じが私にはありがたい。わかってたのかな、だとしたら…嬉しい。因みにワインも美味しかった、良過ぎなくて。良いやつって、少し渋いっていうか…合わへん。貧乏舌やな。
華やかに飾り付けされた並木道を並んで歩く。街が明るいせいか、星は寂しげに瞬いていた。
「流れ星。」
土屋の声と私のくしゃみが重なった。しまった、見損ねた。勿体ない。
「寒い?大丈夫?」
「大丈夫…。」
ず、と鼻をすする。説得力ないわこれ。
「もう少し付き合うてくれる?」
「ええよ、寒いわけちゃうし。」
「それは嘘やろ、僕は寒いで。」
「うん嘘。寒い、めちゃ寒い。」
「あはは。」
繋いだ手は土屋のポケットに吸い込まれる。コートのポケットなので、そう大して温かくはない。でも、心は温かい。
「なんか願い事したん?」
「ん?流れ星?」
「うん。」
「んー…そんな暇なかったなぁ。」
からからと笑う彼の横顔は無邪気で可愛い。
話しながら歩くと、少し静かな公園に辿り着く。明かりは街灯と月だけで、もの寂しい風ではある。土屋はずんずん進んでいくので、それについていく。
「みてみて、綺麗やろ。」
「わ、ほんまや。」
「とっておき。」
公園は高台にあるようで、広場を見下ろすことが出来た。大きなツリーから伸びる煌びやかな電飾、人の群れ、本当に、賑やかなオモチャ箱みたい。そして、それら全て他人事のように感じた。決して悪い意味ではなく、2人の空間を守っているような安心感。
「流れ星にし損ねた願い事があんねん。」
「なに?」
隣に立つ土屋がこちらを見下ろす。小さく笑って
「ね、依紗。僕のこと、名前で呼んで。」
と呟いた。
「…流れ星の無駄遣いしたらあかんよ。」
「えー。でも僕の最大のお願い事はこれやもん。」
口を尖らす彼に、私は溜息をひとつ。
「…淳。」
呼ぶや否や、土屋は顔を近付ける。唇が少し触れて、すぐに離れる。
「…おおきに。」
細い目を更に細めて笑う。少し照れてるやん、可愛い。
「ね、おもちゃの歌の最後、覚えてる?」
「なに急に…。」
「いいからいいから。」
「えっと…。」
空にさよならお星様、窓にお日様こんにちは…。
「おもちゃは帰る、オモチャ箱、そして眠るよ…?」
土屋が繋いでいた手を強く握った。
「オモチャ達、朝帰りやん。」
「いちゃもんやん。」
「…はは。今夜は帰したくないんやけど。」
その言葉に、目を瞠る。
「…下手な誘い文句やな。」
「でもドキドキしたやろ。」
「う、うるさいな!」
その表情はさっきの笑顔とは違っていて、少し妖艶な笑みだった。心臓がひとつテンポを上げる。
聖夜の月明かりの下で
月明かりに照らされた彼の髪は、オモチャの人形みたいに綺麗だった。
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SDワンライ
『聖夜の月明かりの下で』
投稿作品