大阪
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あーもー最悪や。お腹痛い。いたいー。
「おう、依紗……な、大丈夫か。」
烈くんが部屋に入ってくるなりぎょっとしてこちらを見る。や、うつ伏せやから顔は見えんけど多分そう。殺人現場さながらの私の体たらくに対して最高のリアクションや。へへっ、やったぜ。
「烈くん、おなかいたい。」
「どういう痛いや。」
「月のやつ。」
「ならフローリングで転がってんなや、冷えは大敵やろ。」
ぷぷ、烈くんの口から、冷えは大敵、やて。笑わせんといてやー。ホンマにお腹痛い。
烈くんの顔見たろ思て仰向けに切り替える。いてて。烈くんはコートを脱いでハンガーにかけとるとこや。こちらを振り返ると徐に私のそばに膝をついて覆い被さってくる。え、なに、なにすんの!?
「依紗、首、つかまれ。」
「え、うん。」
ぐん、と抱き上げられ、そのままベッドに降ろされる。烈くんは体を離して立ち上がるとレジ袋をがさがさと漁りながらキッチンに立った。去り際に頭をポンポンされたのには驚き過ぎて心臓が1ミリ前に出た。食器棚からマグカップを出して、…ちょうど手元が冷蔵庫で隠れててみえんけど、何やら作業したと思ったらレンジにカップを入れて温め始めた。私は横向きになって、やや背中を丸める。この方が痛みが和らぐ感じするねん。
「自分家みたいやね。」
「付き合うてどんなけ経つ思てんねん。」
「せやな。」
そんな話をしているうちに、レンジが仕事を終えたとばかりに主張する。カップを取り出す時に、あちっ、とか言ってて可愛い。
スプーンでくるくる混ぜるとこちらに持ってくる。香りから察するに、ココアだ。テーブルに置くとこちらに寄ってきて、腰のあたりをさすってくれる。あ、それすごい楽になる。
「ココア作ってくれたん?」
「おお、依紗、月のもんの時はこれ飲むと楽になる言うてたやろ。」
うそ、覚えててくれたん、ホンマに?
「…でも、甘いのもチョコ系も程々にせえよ。」
「なんで?」
「小難しい話になるから割愛。」
「りょーかい。ね、膝枕してよ。」
「却下。どーせかたいとか文句言うんやろ。」
「えー、それも愛情表現やん。」
へへ、と笑うと、烈くんは溜息をついてベッドに座る。私はずりずりとその太腿に頭を乗せた。
「かたー。」
「はいはい。」
「でも好き。」
「そらドーモ。」
顔にかかる髪を耳にかけてくれるのがくすぐったくて文句を言おうかと上を向いたらキスされた。びっくりした。
「…俺も好きやで。」
「お…おおきに。」
烈くんは、ふ、と笑う。貴重な微笑みを頂きました。心はぽかぽか。顔も真っ赤やなこれは。しゃーないねん、烈くん、かっこいいんやもん。背も高いしな。
「ココアが冷める、ちょおどけ。」
「どけ、てあんまりやな。」
私が体を起こすと烈くんは立ち上がってテーブルのカップを持ち上げる。
「まあええやろ。ほら。」
「おおきに。あったかー。」
ほかほかと湯気が立ち上るカップに口を付ける。甘くてほろ苦い、いい塩梅のココアに身も心も温まる。
「かたい太腿と温かいココアに癒されたわ。」
「早口言葉みたいやな。よお噛まずに言うたわ。」
「アナウンサーいけるんちゃうん?」
「アホ、偏差値足らんわ。」
「なんやて!?農学部なめんといてや!」
「顔の話や。頭もやけど。」
「ひどない!?」
くつくつと笑う烈くんに猛抗議。なんやの、彼女つかまえてその物言いはなんやの!!
悔しくて、ぐい、とココアを一気に飲んでやったが熱くてむせる。烈くんはすごく嫌そうな顔でこちらを見た。ひどいそんなん。いや自業自得なんやけど。
烈くんは自分のハンカチを取り出すとキッチンで濡らして持って来てくれた。なんやかんや言うても心配してくれるんやな、好き。
「アホ、なんでイッキすんねん。火傷してへんか。」
「そんな烈くんに火傷や。」
「お前ホンマ捨て置くで。」
「ごめんなさいすいませんホンマ見捨てんといてください。」
「わかったからはよ拭き。」
私の手からマグカップを取り上げると、もう一度キッチンへ行き、今度は布巾を持って来て正面に膝立ちになって、私の洋服を拭いてくれた。
「着替えるか?」
「せやな、そーする。」
「早よ脱ぎ、シミになるで。」
「デリカシーないなぁ…着替える言うてるやんか。あっち向くとかせんの?」
「手伝うたる言うてるやんけ。」
「んなっ、アホ!」
ばし、と肩を叩く。いてっ、と言いながら笑い、立ち上がる。
「服どれや。」
「自分でやるからええ。」
「はいはい。」
烈くんはベッドにもたれて座った。私はベッドからおりるとクローゼットを開けて洋服を選び、またベッドに乗ると、烈くんに声を掛ける。
「後ろ振り向いたら承知せんからな。」
「なんや、見ろ、いう振りか。」
「ホンマしばくから!」
南くんは笑っとった。私はぷりぷり怒りながらTシャツを変えた。生理痛は知らんうちに消えとった。
Painkiller
(烈くんは最強の鎮痛剤。)