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インターハイが終わった。思いの外、呆気なく終わった。そんな俺を、依紗はあっさり出迎えた。
「お疲れ。花火大会行く?」
そうだ、去年はインターハイと重なって行けなかったんだった。それまでは毎年行ってたんだ。依紗と。
いつもは俺から誘ってた。なんだかんだ言いながら依紗は付き合いが良くて。周りから付き合ってんのかとか聞かれるけどそういうのでもなかった。なんか、家族みたいで。
「栄治、アメリカ行くんだよね。」
「ん?あー…うん。」
隣を歩く依紗はいつの間にか小さくなった。というか、俺がどんどんでかくなった。小さいというよりは、華奢だと感じるようになった。
「もー、栄治がもたもた歩いてるから…」
腹に響く轟音と共に、三尺玉が高らかにあがる。
「始まっちゃった。」
依紗は俺の手を引く。大きな花火を、俺は他人事のように眺めていた。
「依紗、そんなに慌てなくても花火は逃げないよ。」
「逃げないけど、いっこも見逃したくないじゃない!」
「栄治と見る、最後の花火なんだから。」
その言葉に、どきり、とした。
そうだ。花火も、依紗の浴衣も、一旦見納めだ。
一旦。
……一旦?
違う。
俺が戻ってきた時に依紗とこうして花火を見られるかなんてわからない。彼氏ができてるかも知れない。
俺が日本に戻ってくるのかも、わからない。
「ねえ、本当にどうしたの?」
「依紗…。」
「やだ、ちょっと、泣いてるの?」
「泣いてないよ。」
ず、と鼻をすする。泣いてねーよ、まだ。涙がこぼれないよう、大きく息を吸い込んだ。
「もー!折角綺麗な思い出にしようと思ったのに、これじゃ台無しじゃない。」
依紗は笑いながらハンカチを俺に寄越した。その手を引いて、抱き締める。
「忘れさせない。」
「思い出になんて、させてたまるか。」
「好きなんだ、依紗が。大好きなんだよ。」
結局涙はこぼれてしまったけど、想いはあふれてしまったけど。依紗は確かに俺を抱き締め返してくれて。うんうん、と何度も頷いてくれて。
一緒に、泣いて。
「私もだよ。ずっと栄治が好きだよ。」
夢中で唇を重ねたけど、文句を一つも言わなかった。
「離れても、ずっと依紗を好きだよ、愛してる。」
一際大きな花火が夜空に煌めいた。
泣き虫の愛唄
(随分みっともなく泣いてしまった。)
(でも、お互い様だよな。)