海南
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
唐突に担任教師から電話が入った。
『徳重、お前今なにしてんだ。』
なにって、
「課題も終わったので堕落の限りを尽くしてます。」
『お前アホだな、水遣り当番だぞ。』
「……ん?」
教師が生徒にアホはダメだろ、とかそんなんはどうでもいい。
「……あ、忘れてた。」
すぐ行きます、と電話を切って支度をする。
あーあ、なんで忘れてたんだろ。
一応制服で登校はしたが、腕は日焼け防止の長手袋、日傘を持ち、スカートはジャージにはきかえ、足元も濡れてもいいようにビーチサンダルに履き替えた。だっさい格好ではあるが、水遣りの間くらいはいいかな。
誰もいないのをいいことに鼻歌交じりに水遣りをしていたら、たまたま近くにいた生徒に水を掛けてしまった。
「わ、すみません!」
「つめてー!なんだよ、徳重じゃん!」
「清田だ、謝って損したなー。」
「損ってなんだよ!」
清田は走り込みをしていたらしく汗だくで、さらに水を掛けちゃったのでずぶ濡れ。
丁度良かったんじゃん。
「部活終わり?汗流してく?」
「おい、バカ、やめろって!」
逃げ惑う清田に爆笑しながら水を掛けていたら、いい加減にしろ!と一瞬で距離を詰められホースを持つ手を掴まれる。
「わ、離してよ!」
「やーなこった。」
だっせーカッコだな、と笑いながらホースを取り上げると、距離を取って私の足元目掛けて水を発射する。
「ちょっと、やめてよバカ!」
「さっきの仕返しじゃあ!」
女の子相手になんて奴だ!
「いい加減に…してよ!」
「おいバカ、向かってくんな…」
清田はホースの吹き出し口を上に向けたが、スイッチを押したままだったので水が降り注いできた。お陰で髪も制服のポロシャツもジャージもまとめてびしょ濡れに。こいつ、許さん。
「き〜よ〜たぁ〜…」
「悪かったって!つうか発端はお前だろ!?」
「問答無用!」
「!おい、待て、マジで待て!」
何かに気付いた清田に、私はガラ悪く「あぁ?」と返した。
清田はキョロキョロと周りを見ると、私の腕を掴んでどこかへ連れて行こうとした。
「待ってよ、鞄!」
「ああ?貸せ!」
清田は少し離れたところにあった鞄をひったくるように持つと、掴んだ腕はそのままにずんずん進んでいく。
なんなんだ!
「ねえってば、どうしたのよ!」
バスケ部の部室まで連れて来られると、清田はロッカーから大きめのタオルを出し、私の肩から掛けて、前を閉じる。そして小声で
「……透けてる。」
と言った。
「!」
清田は、ごめん、と弱々しく言うと、Tシャツを出し、使ってねーから、と押し付けてきた。
「みねーから、そっちで着替えたら。」
そう言って、死角になる位置に座ったようだった。
「あ、りがと。」
渡されたTシャツに着替え、濡れた下のジャージも脱いでスカートに履き替える。柔軟剤の香りが心地よい。
「着替えた。」
「ん。」
清田は立ち上がり、こちらにやってきて目を見開いた。そして長い溜息をつく。
「ちょっと大きいだけじゃない。なんで溜息なんて…」
「徳重、」
「なに。」
肩を掴まれ、少し驚く。そして顔を上げた清田は
「ごめん!」
と言うや否や、急に抱き締められた。
「ちょ、ちょっと!」
力が強くて振りほどくこともままならない。
ジタバタと対抗していたら、
「もう少し、こうさせて。」
なんていつもより低い声で囁かれたので、急にドキドキしてきてしまう。
濡れてる清田の体は熱くて、不覚にもときめいてしまったなんてことは、しばらく誰にも言えなかった。
ただ、このままだとまた濡れてしまうと思ったので、すぐに押し返してしまったのだけど。
ずぶ濡れウォーズ
(ときめいた私の負け。)